「目に見えない風と希望をつかまえる」風をつかまえた少年 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
目に見えない風と希望をつかまえる
アフリカのマラウイのこと。
ウィリアム(マクスウェル・シンバ)は父トライウェル(キウェテル・イジョフォー)の甲斐あって学校に通うことができるようになった。
アフリカでも最貧国のひとつであるマラウィでは、学校に通うことなどなかなかできることではない。
けれども、通い始めた矢先、大雨による洪水、その直後に大旱魃に襲われ、頼みの綱の作物の収穫はできなくなってしまう。
ときは、2001年。
米国では同時多発テロが発生し、マラウィでは民主化されたといえでも政治は一部権力者の手に握られており、寒村には援助の手が差し伸べられることはなかった・・・
というところから始まる物語(というか、書いたあたりでは、もう中盤過ぎ)。
アカデミー賞ノミネート俳優のキウェテル・イジョフォーの初監督作品であるが、彼の出身は英国ロンドン。
両親もナイジェリア出身なので、マラウイとの直接的な関係はないが、やはり、アフリカンの血が騒いだのか、それともヒューマニズム的動機からなのか、そこいらあたりはわからない。
けれども、初監督(驚くべきことに脚本も兼ねている)作品にしては、社会派実録エンタテインメントとしてガッチリとつくらている。
途中、ウィリアムの姉が大学進学の権利を得たものの活かすことができず、生家のある村で暮らし続けなければならず、また、ウィリアムを教える理科の教師と恋仲になり、挙句、口減らしと自ら言って出奔してしまうエピソードや、理性的であった父トライウェルが旱魃を機に、政治活動に走ったり、または逆に頑迷な農夫生活に戻ったりというエピソードも出るのだが、描写がエンタテインメント寄りになっているのは惜しい。
ただし、この手の社会派実録には少しばかりのエンタテインメント性がないと商売にならないのはわからなくもない。
最終的には、タイトルにあるとおりにウィリアムは「風をつかまえ」て、村を旱魃から救うわけだが、風も希望も目に見えないものである。
そこいらあたりを踏まえると、クライマックスの風車と水の描写は、定石といえども巧みで、やはり感動してしまいましたね。
映画は、イギリスとマラウイの合作です。