「けたたましいシャッター音から国の情勢を知る」風をつかまえた少年 突貫小僧さんの映画レビュー(感想・評価)
けたたましいシャッター音から国の情勢を知る
題名で既に結果が判ってしまう作品である。よった、重要なのは、その結果に至る道程、話の流れが、大きなポイントになる。邦題の「風をつかまえた」という言葉もいまひとつ。個人として「風を味方にした」も今一つだが。「ウィリアムの生き様」は、エンドロール直前で明かされる。勉学に勤しむ空間も与えられずに、蔵書のほとんど少ない貧相な図書館で、大学まで行くことが出来たのは、凄いことではある。アフリカ大陸の中の一つの国の現実にある社会情勢を知り得たことは、私には考えさせられた。政府があまりにも秩序がなく基盤が弱く信用の置けないものと捉えており、食糧の途絶えた穀物用の備蓄倉庫に隠れ果せた主人公が聞く、けたたましいシャッター音に耐える場面は、国の情勢が良くわかる場面であった。母国で勉学に一心に取り組んだ彼の努力というのは、どれほど立派であったか、作品から彼が厳しい環境下に置かれていたのは十分に伝わった。母国においてどれくらいの知識を得たのだろうか。入学した学校の担任が「理科??」担当であったことも幸いであったし、彼のその後の人生に少なからず影響していたのであろうか。作品の展開は、至って容易であった。しかし、彼が(ジャーナリストの池上彰氏の言う)物理の「ファラデーの法則」をどのように知り得たのか。応用できたのかが、描かれていないのは、作品としてマイナスである。姉の「駆け落ち」後の展開が、早すぎ。ラジカセが直せたからと言って風車を利用して「風力」を着想できるだろうか。「旱魃」の季節の穀物の栽培が一段階解決出来たとはいえ、「雨季」の季節は、どのように逃れたのか。と、ツッコミを感じた入れたくなるが、後進国における人間でも「創造」というものは出来るという。監督の訴えは、ガンガン伝わっていると思う。観せて頂いて感謝と言える作品。個人的には、愛犬ガンボ(名前失念)の飢えによる死は、とっって~も悲しい。もう少し早くウィリアムの父が自転車を息子に譲ってやれば。でも、あの国での移動手段は、徒歩か自転車しかない。非常に残念である。時代の進歩は、つねに遅い。世界を感動で包んだかどうかはしらんが、色々と考えさせられる作品である。