劇場公開日 2019年10月4日

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「主人公達の描き分けが印象的です。」蜜蜂と遠雷 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0主人公達の描き分けが印象的です。

2020年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

音楽の演奏を題材とした映画は、役割を演じる役者と演奏する音楽の整合性をどのようにとるのかという難題がありますが、本作はこの難題をみごとに克服しているように感じました。

ピアノにはほとんど初心者の耳にも、作品の中心人物である四人の音楽に対する思い、そしてその情念を演奏にどのように反映させているのかを理解できるほどでした。

もちろん場面のつなぎ方やカメラワークは演奏の邪魔をしないよう入念に計算されているし、楽譜の描き方といった映像ならではの演出も大いに貢献しています。これらの要素を結び付けて高い一貫性を持った映像を作り上げた手腕はとても素晴らしいと感動しました。

物語の本筋は、国際ピアノコンクールの予選から本戦までを描く、分かりやすい構成です。これに主人公、栄伝亜夜の回想が挿入されます。主要な登場人物である四人それぞれの人物がどのような背景を持っているのかも物語を語る上で重要な要素ですが、インタビューの形式をとった語りは、説明臭くならず、物語の流れも阻害しない手法で、これもまた良かったです。

松岡茉優さん扮する栄伝亜夜は、ある過去に囚われてピアニストとしての人生に踏ん切りが付けられないという、少し影のある人物設定です。しかし松岡さんの持って生まれた特性なのか、黙って佇んでいるとどこか近寄りがたい雰囲気があるのにも関わらず、振り向けば親しみやすい笑顔を見せるというギャップがあります。これがむしろ他の天才ピアニストとの交流という描写に強い説得力を持たせています。本当に素晴らしい役者さんだと改めて思いました。

物語の分かりやすさと引き換えなのは仕方ないと思うのですが、主演の四人以外の描写を思い切りよく削っているので、「国際コンクール」の規模が体感しづらかったのは少し残念でした。

yui