「原作同様に素晴らしい出来でした!」蜜蜂と遠雷 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
原作同様に素晴らしい出来でした!
原作同様に素晴らしい出来でした とここに書けることが、とても嬉しいです! 是非、みんなも観て、感想を教えてください!ピアノに興味ない人も楽しめます(俺がそうだから)
ある一つのピアノコンクールの予選から本戦を舞台に、「かっての天才少女は舞台から逃げた後8年のブランクを克服して再生できるのか」、「子供もいる市井のピアニストは、音楽学校で24時間ピアノ漬けの面々よりも優れた演奏が可能なのか」という2つのストーリーが繰り広げられる。そこに「完全に精密な演奏」と、「自由な発想」というテーマが縦横に絡み合って、ピアノを知らない俺でも、ずっとドキドキワクワクしていられました。
原作での主役四人のうち、二人だけに大胆に焦点を絞ったこともこの映画としては成功していると思う。
何がよいかの一つに、「ピアノが本物」がまず欠かせません。全ての曲を本物のピアニストが演奏しています。多くの人がこの映画を観て、より音のよいシアターでかかるようにならないかなあ。そしたらまた観に(聴きに)行こう!
(世の中に実際にはない曲「春と修羅」は、四者四様のカデンツァ(即興演奏)含めて、この映画のために作曲され演奏されています。原作を読んだ方なら、文字から自分がイメージした曲と映画での曲を比較できるってわけです。
自分は原作を読んでいますが、未読でもこの話はすんなり入りそうだなと思いました。実際に未読の方が観てどうだったかも、是非聞いてみたいです。
エンドロール中の音楽、さらに最後の音まで堪能してください。タイトルが、腑に落ちるかもしれませんから。
最後に画面左下にそっと出る最終順位も、この映画のテーマとする理想と、現実を示していて面白いです。(こんなことを書く俺は、コンテストの本当の意味がわかってないってことになっちゃうか)
-------ここから、ちょっとネタバレありです。書かずにはいれなかったので。観てない方は、観てから読んでください-------
栄伝亜夜の再生の物語が、風間塵、高島明石、マサル・C・レビ=アナトールという三人を触媒として、見事になされる姿をちゃんと描けていて、原作に沿って、焦点は絞り込むが、テーマはしっかり踏襲するという「忠実な映画化」だと思う。
触媒である三人もそれぞれにストーリーを構成している。高島明石は、やりきった充実感と共に "より優れた彼等" を身体で味わう。その上で「自分が演奏を続けることは、俺より彼等が優れていることとは関係なく、俺に許されていることなんだ」と心から思うシーンには、「止揚って、こういうことなんだ」と、こっちが教えられた。
マサルが、亜夜の母がまだ存命で、二人でピアノを習っていた頃の記憶というか体感を亜夜の記憶の奥から引き出す。明石が、演奏することの素直な喜び、そこにコンテストはあってもその本質は競争ではないのでは? という気付きを亜夜に共有する。塵が、母が亜夜の心に埋め込んでおいた「世界は、音で、音楽でできている」ということを引き出す。
塵が、一足先にそこにたどり着き、現在既に死去している故ホフマン先生に「先生、(それを心で理解しかつ実際に演奏できる "仲間" を見つけたよ」と報告するシーンは、目頭が熱くなりました。
ストーリーの中で、ピアノというもの、コンテストというもの、音楽というものに対する、読んでいるこちら側の理解を、少しずつ少しずつ深めていき、こちら側の心を、上記のラストシーンがストンと落ちるまでにしておく。この点が、原作の最大の価値とするならば、この原作に忠実な構成こそが、(実際の音楽にして見せる、ということと並んで) この映画の最大の価値ではないでしょうか。
家族持ちで市井のピアニストという明石の家庭という存在が、一つの重要な位置を占めている。彼という存在が無ければ、天才たちの苦悩にとどまり、観ている(読んでいる)我々が考える、という橋が架からなかったかもしれない。
例えば、カデンツァを披露した際の(素人である)妻のコメント「いろいろリサーチしたのはわかるんだけど、かえって重たくなっちゃった気がする」に対して、明石が多少困惑し憤慨しながらも、「そうか、わかった」と落ち着いて答えるシーン。ここだけで、明石の、人の声を受け入れられるニュートラルさが、観ている側に伝わる。かつ、市井のピアニストという位置を観ている側に確認させてくれる。
さらに、続く妻の「でも気にしないで。私なんか素人だから」に対して、「素人にも届くピアノを、俺は目指しているんだよ」と、やや語気荒く返すシーン。本作のテーマの一つである "コンテストは誰のためにあるのか、ピアノは誰のためにあるのか" という問いを観ている側に投げかける。それを感じるべきは、我々なのだ、
と。
小説という文字だけで想像させる表現を、映像化することでわかりにくくしてしまわず、そのまま伝えられていることは、監督及び松坂さんの、でかした仕事と思う。
-----------------------2019/11/1追記
蜜蜂や塵くんのくだりといった、今回大胆に省略された部分に関しては、琥珀さんのレビューをご一読されることをお勧めします。原作も読んでみたくなるかもしれません。
以下は、非常に楽しくかつ役に立ったやりとりの一部をレビュー内に残しておくものです。
私も、原作の音楽的な主題は、ホフマン先生が、塵という劇薬をこのコンテストに出場させることによって、皆が、つまり、審査員やコンテスタントや我々観客(読者)が、「過去からの名曲を完璧に演奏することだけがピアノの、音楽の真髄なのか」というテーマを考え始める、ということなのだと思います。琥珀さんの言う通りかと。作者である恩田さんの凄さは、たった上下二巻という分量で、読者をそこまで引き上げてしまう力だと思います。俺のようにピアノ弾いたことない読者まで。
ただ、それは私で言えば、原作を読み終える終盤頃から気づかされることでした。それでこの映画は、よりわかりやすい、亜夜の再生と明石の悟りをあえて中心におき、本来のテーマを最小限に抑え込んだのではないでしょうか?
原作を読んだ人にはそのテーマが理解でき、読んでない人にはそのテーマを理解するためのベースみたいなものを築き上げてくれる、という線を目指したのではないでしょうか。
それだけに、映画を観て、原作にあたる人は、そこでまた映画とは別の感動を得られるわけで、ちょっと羨ましく思える。
そして、「だったら、このメンバーのまま、まったく同じ話を、ホフマン先生と塵の側から、もう一本作って、俺たちに観せてよ(聞かせてよ)!」という思いは、とても強くなります‼︎
11/17追記
そろそろ終了してしまいそうなので、再び観て来た。メールでお願いしてみるくらいでは、チネチッタ LIVE ZOUND での上映はやはり叶わなかった。残念だが、7.1chで満足しておくことにした。
「世界は音楽で溢れているね」「あなたが音楽を鳴らすのよ」というセリフにあらためて震え、最終審査のホールに亜夜は微笑んで入場したんだ、と大切なことに今更気づき、再び満足して劇場を後にしました。
ああ、いい映画を観た。
音が響いてる感じ、しますっ❗️
ピアノ弾かない私が言うのもなんですが🤣
音楽を文章で表現出来る事が凄いです。
慌てて自分のレビューにコメント返しちゃったので、(たまにやってしまう💦)ダブります。
ありがとうございました🙇♀️
うわ、読んだんですね。いいな、って俺も読んだけど。おっしゃるように、塵と亜夜が中心なんでしょうね。塵がホフマン先生から「探せ」と言われているのは、亜夜のような人ですもんね。
あと、原作は、ホントに行間に音が響いている感じ、しませんか?(ピアノ弾かない俺が言うのもなんだかなあ、ですが)
CBさん、こんにちは🎃
「蜜蜂と遠雷」読み終わりました。映画も良かったけど本も凄いです❣️すさんだココロが洗われます😅原作は亜夜と塵が中心に私には感じました。
でも、亜夜と明石が中心の映画も勿論良かった😍
映画化されると、ウーン🧐て事が多い中、両方とも素晴らしいのはすごい!こういうモノが増えて欲しいです❗️
風間塵は「ミツバチは刺したら死ぬという生態」のキャラクター設定だと感じました。
ミツバチは可愛いだけではなく毒と死を共有しています。風間が指から血を出しながら鍵盤を叩いていた時、そこにふとミツバチが飛んだのでそう思ったのです。
僕はかつてオルガン(パイプオルガン)弾きで、鍵盤を血で汚したことがあるので、音楽に命を削る風間には言葉抜きでの共感をしています。
(CB さんとグレシャムさんに同文コメント送信)
ピアニストは外見を俳優に寄せ、俳優は内面や仕草をピアニストに寄せていってるようで、纏う雰囲気とかその繋ぎの滑らかな事とか…音を聴かせる工夫を映像でもしてたように思えた映画でした。
原作は読んではないですが、原作を読んだからこその高揚感をCBさんのレビューから感じて、よりこの映画が素敵に思えました。
CBさん コメントいただきありがとうございます。
お休みの時間つぶし程度で観始めた映画がこんなご時世もあり、週末だけでなく家での時間つぶしどころかわざわざ時間を取って、かつ色々な方々のご意見も参考にさせていただきながら観るようになりました。
趣味は「映画鑑賞です!」なんておこがましくいってみてもいいかな?!なんて感じになってきたことが今の状況に対する唯一のメリットなのかななんて最近とみに思います。
この作品の深さをCBさんはじめ皆さんから教えていただき「原作長いけど挑戦してみようかな」いや先に「もう一度観てみようかな」なんて思ってます。
CBさん、コメントありがとうございます😊皆さんの熱いレビューとコメント読んで、絶対本を読まねばっっっと思いました。
読みたい本が何冊か溜まっているので、ちょっと先になりますが必ず読みますよ😆
原作は未読でした。
映画がとてもよかったので、原作もすぐに読みました。原作の方は、言葉から音を想像する楽しみがありました。どちらも傑作ですね。
恩田さんは「六番目の小夜子」の原作者と知って、びっくり。大好きなドラマだったから。
CBさん、レビューにコメントいただきありがとうございました。
大変遅ればせながら、コメントへの返信書かせていただきましたが、
こちらのコメント欄にもお邪魔しますね。
まず、CBさんにお礼を述べたいです。……ありがとうございます!
少し気になってはいたものの、このままスルーしようかとも考えていた、この『蜜蜂と遠雷』
CBさんの熱量のこもったレビューを読んで俄然興味が湧いてきて、観に行ってきました。……おかげでこんな大傑作を見逃さずにすみました。
原作小説は未読。ほとんど何も知らないまっさらな状態で観に行きましたが、何の違和感や消化不良感もなく、ただただ強烈な衝撃を受け、大いに感動いたしました。少なくとも私の中で今年の邦画ナンバーワンの傑作なのは間違いないです。
何よりもピアノの演奏シーンを言葉で説明しようとせず、演奏者の動きと音楽、そして観客側のけっして大げさでないわずかな表情の変化やリアクションだけで表現しようとする、作り手の矜持にシビれました!
また、現在、原作小説の上巻までしか読めていないので、まだ断言は控えますが、ボリュームのある小説や漫画を映画化した作品としても、本作は理想的な形になっているんじゃないかと考えています。
素晴らしい作品に出会わせてくださって、本当にありがとうございました。
CBさんは、私にとっての“蜜蜂”です♪
CBさん、コメントありがとうございます!
映画の原作は読まない主義なので、皆さんのレビューがとても参考になります。
あの4人が互いにそれぞれ影響しあってることは映画だけでも読み取れるのですが、多分塵くんだけは描写が足りません。
謎のままなんですよね・・・
まぁ、それだけ考えさせられることもいい作品の特徴だと思っています。
CBさん、原作に絡めた感想、ありがとうございます。
読んでいて涙が出てしまいました。
そして、琥珀さんの感想を読んで、全く同感しています!
僕も塵を核に原作を読んでいたんです。
野心に溢れた恩田陸さんは、クラシックが一部の愛好家だけのものになっていることをご存知で、音楽をもっと広い世界に引っ張りだしてやるぞ!的なテーマが原作にあったように思っています。
なので、原作での風間塵の登場からワクワクさせられたイメージと映画とが、違って見えたのですが、CBさんと琥珀さんのおふたりの感想を読んで、とても納得することが出来ました。
突然すみません。
琥珀さんとの、やりとりを含めて素晴らしいです。映画はリリースした瞬間から
受け手の物!が持論です。
個人で感想が違うのも当たり前。でも
何故違うのかを語り合うのは素晴らしい事です。お互いを尊重しながら。
琥珀さんのレビューも合わせて勉強になりました。
CBさんへ
私のコメントにも真摯に向き合っていただき、痛み入るばかりです(居眠り磐音のように私も使ってみたかった表現(^.^))。原作も映画も、味わった後で更に色々と考えることが楽しいなんて、とても素敵で贅沢な出会いですよね。それをこうして共有できる方がいることにも素直に感謝するばかりです。
CBさんへ
同じように原作が好きでこの映画を観てるのに、捉え方がだいぶ違うので興味深く拝読致しました。
原作においても栄伝亜夜の再生が物語の核だとすれば、この映画が原作に忠実、というのは納得です。
どう解釈するかについて正解などというものは無いので反論とか異論ではなく、そんな見方をする奴もいるのだという参考として、有難迷惑だとは思いますが、ひとこと。
私は、どうしても風間塵が『ギフトであり劇薬』ということが、物語の核であって欲しかったのですね、きっと。
勿論、ギフトの中でも『最大のギフト』は、栄伝亜夜を本来の音に溢れた世界に連れ戻してくれたこと。
『劇薬』とは、音楽への恩返し(元々自然から受け取っていたのに室内に閉じ込めてしまった音楽を解き放つこと、本来の音楽として解き放つこと)ということを既成の音楽的権威を象徴する人たち(ナサニエルや三枝子たち)に気が付かせてしまうこと。
映画でも冒頭にホフマンの推薦状を読み上げていたので、亜夜の再生・復活の物語に絡めて、そのふたつのことをもっと織り込んで欲しかったんですね。
ただ、松岡さんの演技と松坂さんの存在感が素晴らしかったので、映画としてのメッセージが違うもの(ひとことで言えば、亡き母と母から送られた音楽の本質に気付き、向き合えるようになる亜夜の成長物語)に見えてしまったのかもしれません。
原作について再考する機会をいただき、感謝しております。ありがとうございました。
CBさんへ
いつもコメント、ありがとうございます!
私、ピアノは好きですが普段聴くのはJazzです。クラシックは本当に有名な曲しか判らないし、演奏者に至っては全く分かりませんw
月明かりの元でピアノの前に座った二人の音が、全然違うんですよね。風間の方が「ずっと月明かりの下に居たい」みたいな感じで、亜夜の方が「歌い出したい気分」な感じで。状況的には逆かなと思いましたけど、良かったです!
それと今年はドビュッシーの月の光の年ですね。ゴジラとJokerの予告で派手に鳴り響いてましたw