「令和時代の気持ちいい娯楽活劇映画」プロメア おすしさんの映画レビュー(感想・評価)
令和時代の気持ちいい娯楽活劇映画
終わった後に「これが2時間!?」と驚くほどに情報が多い!!
ポップコーンを買わなくてよかった。きっと食べる暇がなかったと思います。
「プロメア」が真にすばらしいのは、ストーリーの焦点をぶれさせなかったことだと思います。
これだけ魅力的なキャラクターたちがたくさん出てくるのですから、それぞれもっと掘り下げたかったところはきっとあるはずです。「新人」と呼ばれるガロがチームの一員となるまで、ゲーラ・メイスがリオをリーダーとして認めるまで、イグニスとヴァルカンの確執、アイナとエリスのお互いへの感情etc...
それらのエピソードを潔くカットし、ガロ・リオ・クレイそれぞれ違う「信念・正義」を貫いていこうとする部分に物語の焦点を絞ったことがこの情報量の多いめまぐるしい映画を、疲れることなく2時間で駆け抜けられる大きなポイントだったんじゃないでしょうか。
直接的に描かないものの「この人たちの間には何かあったんだな」と思わせる描写のしかたも絶妙で、シンプルなストーリーに起伏をつくり、単調にならず夢中で見られました。
個人的にはアイナが優秀な姉の妹であることをコンプレックスに思いながらも、彼女なりに受け入れて誇りに思っていることの人間臭さが素晴らしかった。(進行の都合上、彼女を大人にするしかなかったのかもしれませんが)
映像もとにかくずっと凄かった。
ここでも潔い取捨選択で、人物以外のシェイプをローポリ感というかシンプルな四角と三角に寄せているのに安っぽくならなかったのは色使いやカメラワークなんでしょうか。スタイリッシュなイメージに仕上げる手腕、独特で唸りました。素晴らしかった。
太陽のフレアや炎の表現、かっこよかったですね。
特にリオの怒りの表現、あの湧き上がるようなとめどない怒りの表現、圧倒されました。すごい。
事前に何枚かの劇中カットだけを見ていたのですが、その鮮やかな画面に「映像の色や情報が暴力的に入ってくる作品なのかな?疲れそうだな」と身構えていましたが、とんでもない。
カラフルでありながらライトな透明感を保ち続ける画面は美しく、鮮やかな色を使いながらコントラストを抑えて必要以上にうるさくならない。すごい色彩バランス感覚だと思います。
ガロとアイナの氷の湖上でのシーンの光と影の使い方ははっとしました。本当に素晴らしかった。
声優さんも全員よかったですね。メインキャラクターは声優ではなくて役者ですが、声も含めても役者なのだと改めて感じました。声の演技の幅がすごい!堺雅人さんとにかく凄いです。
ストーリーにはかなり強引というか、それはないでしょって思うところもあります。ガロというまっすぐすぎるキャラクターが受け入れられない人もいそう。なので、万人に向けて「絶対いいから見てね!」とは言えません。
でも、とにかく理屈ではなく映画の表現すべてでこちらを圧倒して夢中にさせてくるこの感じはハマる人にはハマると思います。
歌舞伎や能をルーツに持つ、アニメ的な「型」「お約束」をキャラクターにも演出にもストーリーにもふんだんに盛り込んだ作品なので、「日本のアニメ」になじみがない人にはどう受け入れられるのかな?とも思わなくもないですが、良くも悪くも日本でしか作れないアニメーションであり、その最先端であることは間違いないと思います。
最近流行のエモーショナルな泣きのストーリーだったり、問題提起もキャラクターの成長要素もほとんどない。ただただ「娯楽」にステータスをすべて振った超気持ちいい娯楽活劇映画です。見終わって気持ちよく「すっげー!」って言えて気持ちよかった。