「あの部屋は香港そのもの」誰がための日々 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
あの部屋は香港そのもの
父親の借りている部屋には2段ベッドの他、プラスチックの衣装ケースが高く積まれている。
狭い空間に生活に必要なものの収納や、横になるためのベッドが垂直方向へ伸びている様子は香港の街そのものである。
21世紀になってすでに20年になろうというのに、1980年代のMr.Boo!シリーズに出てくるような住環境が描かれている。宿命的に土地が不足している香港では、貧しい人々は未だ、このようにアパートの一部屋に家族で暮らしているのだろうか。
この狭さを活用したカメラアングルその他の演出が、この母娘の閉塞感を際立たせている。
介護中に死亡した母親を旧宗主国イギリス。久しぶりに一緒に暮らすことになる父親を中国。という暗喩ととらえることも出来たのかも知れない。
しかし、あまりの切実さに涙の一滴すらも流れなかった。
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