「確かな第一歩を踏み締め、果てしない夢への道を切り拓いて行け!」キングダム 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
確かな第一歩を踏み締め、果てしない夢への道を切り拓いて行け!
原作は未読だが、大人気コミックという事は知っている。それこそ、実写化したらブーイングが起きるくらいの。
何年も前から噂されてたが、遂に実写化。
監督は、コミック実写に定評あるものの、時々作品にムラがある佐藤信介。
キャストは、代わり映えのないコミック実写いつもの顔触れ。
あちゃ~、こりゃまたコミック実写に黒歴史が一つ…。
ところがどっこい!
予想に反して、好評の声が続々。
かく言う自分も話が面白そうで興味持ち。
見てみたら、完璧な傑作とは言い難いが、コミックの実写化としても邦画スペクタクル史劇アクションとしても上々だったと思う。
実は、もうちょっと重厚な作品なのかなと思っていた。
実際は、奇抜なキャラもたくさん出るし、話も漫画的。(漫画原作だけど)
しかし、中国で大規模なロケを行ったそのスケール、見る前は不安でしか無かった役者陣の熱演、邦画でも最上級の迫力アクション…スタッフ/キャストの熱意は称賛モノ。
本当に久々に気合いの入った邦画エンタメを見た!
安易なコミック実写化は見習って欲しい。
古代中国の話でキャラ名を覚えるのにはちと一苦労だが、話自体はシンプル。と言うか、少年ジャンプ的な王道ストーリー。
天下の大将軍に俺はなる!
冒険。迫り来る敵との闘い。幾度も窮地に陥りながらも、少年は強くなっていく。
仲間との出会い。
そして、交わした亡き親友との誓い…。
正直言うと、序盤はタルかった。
何故なら、主人公・信と親友・漂の友情のドラマをよく知らないからだ。
原作では深く描かれているのだろうが、映画ではたかだか序盤10分くらい。
それで死別のシーンを見せられても、いきなり過ぎて感動が込み上げて来ない。
これがクライマックスだったらたっぷり感動出来るのだが…、別の話になっちゃう。
序盤はグッとくるものに欠け、なかなか話に乗れなかった。
が、話が進んでいくと、この亡き漂の存在が信にとっても見る側にとっても重石になってくる。
若き王・贏政の影武者として、謀反を起こした弟王に殺された漂。
信にとっては、贏政も弟王も親友の仇。
無駄死にと思っていたが、命尽きるまで、漂がどんなに誇り高かったかを知る。
王の影武者を、名誉として忠誠を尽くす。
襲撃に遭った時、本物の王の如く士気が低下した軍を鼓舞する。その姿の何と勇ましい事よ!
そして、信と交わした約束と夢を決して忘れない。
無念の運命で自分はそれを果たせないが、親友に託す。
序盤は薄かった感動が、次第に熱を帯びていく。
気付いたら、自分の胸もかなり熱くなっていた。
それを体現したキャスト陣。さっきも書いたが、見る前は不安しか無い顔触れだったが、今はマジで謝罪したい。
山﨑賢人を見直した。これまでは感情あるんだか無いんだかお世辞にも上手いとは言えなかったが、全身全霊の熱演。彼も小栗旬同様、少女漫画の実写化でイケメンやるより、こういう熱い男をやる方がずっといい。確かに叫び、感情ぶつけまくりの役柄だが、きっとこんな少年がこれから成長していくのだろう。
吉沢亮も同じ。これまで甘っちょろい作品や役で、全く気にも留めていなかった。しかし本作での王・贏政と漂の一人二役は見事! 特に王・贏政は、色気すら漂う気品、なびく髪すら美しく、気品も威厳も風格も期待以上だった。
見る前は主役二人より個性的な周りを語ろうと思っていたのに…。
勿論、周りも良かった。特にこの二人。
山の王・楊端和。その正体は何と女で、演じるは長澤まさみ。圧倒的な強さ、美しさもさることながら、野蛮で屈強な山男共を従えるカッコ良さは一見の価値あり!
そして、名を轟かし、信が夢見る“大将軍”である王騎。このキャラのインパクトが本当に強烈! まるで公家か某宇宙の帝王様のような丁寧口調ながら、今回終盤で一度だけ見せた強さだけでも得体の知れない人物。敵になるのか、味方になるのか。味方になったらこれほど心強い者は居ないが、もし敵に回ったら…ゾッとさせる。大沢たかおが巧演。
贏政に仕える高嶋政宏、満島進之介の実直な演技。
強さもクセもある弟王の刺客たち。
唯一浮いてたのは、ヒロイン的な立場の橋本環奈だけかな…。
監督・佐藤信介とアクション監督・下村勇二の名コンビの手腕と仕事ぶりは、手掛けてきた作品群の中でもトップクラスだろう。
原作コミックは今も続く大長編故、根っからのファンには残念な部分や物足りない部分もそりゃああるだろうが、原作者も脚本に参加し、魅力は損なわれていないだろうと感じた。
主人公の信は、画に描いたような熱血主人公。
今や死語のような熱い台詞をストレートにぶつける。
学も無く、戦場も知らず、自信過剰で、ちと熱苦しくウザい青臭い少年でもある。
そんな彼と対峙した中ボス的な元将軍の左慈の台詞にも一理はある。
確かに地獄のような戦場を目の当たりにし、我が身を持って経験したら、夢見る事など愚かで、単なる夢だろう。この世はそんなに甘くない。
しかし、だからこそ、夢を抱きたい。
天下の大将軍になる。中華統一を目指す。…それがどんなに途方も無い夢でも。
夢があるからこそ、何度でも立ち上がれる。強くなれる。
仲間を信じ、誓った約束を果たす為に。
俺たちの夢への道はまだまだ果てしなく遠いが、確かな第一歩を踏み締め、決して諦めない。
そう、本作は始まったばかり。
現在大ヒットしてるようで、間違いなく続編は作られるだろう。と言うか、作られなきゃ困る!
一応今後の期待を込めて、採点は3・5に留めたが、今後の出来と展開次第では、“大将軍”や“王国”級になれるかもしれない…!
近大さん キングダムの続編の記事が、今週発売の文春に載ってたんですが、ご存知ですか?なんと!2~4作までを一気に撮影しているらしいのです!今は国内ロケのみですが、来春は中国ロケの予定だそうで、②の公開は来年末だそうです!ちょっと待ちますが、具体的な話が出てきて嬉しいです!
続編 決定!でも中国ロケが出来るのかどうか?続編こそ中国本土で撮らねばならないと思うのですが、心配です。スタッフ、役者さんの命も、キングダムという映画の命も。去年の今頃は 続編が出来る事をひたすら渇望していましたが あの頃 幸せだったんだなぁとしみじみ思います。