劇場公開日 2019年4月19日

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「役者と音楽が素晴らしい!」キングダム アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5役者と音楽が素晴らしい!

2019年4月20日
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鑑賞方法:映画館

興奮

萌える

原作は、連載 10 年を迎えるコミックで、既に 54 巻までが刊行されている。私は雑誌に連載されたものをごく稀に読んだことがある程度である。戦国末期の七国時代が舞台で、後に秦の始皇帝となる嬴政と、彼を守って奮闘する主人公・信が軸となって物語が構成されている。信は架空の人物ではなく、「史記」に登場する実在の人物らしい。登場人物が多く、戦闘場面が非常に緻密で、読み応えのある作品である。

あまりに壮大な物語のため、実写映画化は不可能と言われていたが、コミックで言えば最初の5巻くらいに話を限定して映画化したものである。本場C国に壮大なセットを組み、10,000 人のエキストラを使ったというだけあって、ビジュアル的にも非常に見応えのある映画であり、戦闘場面も非常に手に汗握るものであったが、どう考えても致命傷を負っているように見えた者が実は死んでいないという例があまりに多くて、かなりご都合主義に思えた。

役者は、まず主演の二人、山﨑賢人と吉沢亮が、原作のビジュアルによく似ていて驚いた。山﨑は、これまで大人しげなイケメンといった役どころから抜け出せずに気の毒な気がしていたが、10 kg 減量して臨んだという本作の演技で、一皮向けたように思えた。王の風格を感じさせた吉沢もかなり好感が持てた。また、敵将の左慈を演じた坂口拓の存在感は素晴らしかったし、楊端和を演じた長澤まさみの美しさには鳥肌が立った。一方、橋本環奈はアイドルのオーラが完全に消えてしまっていて、何故あの役に当てられたのかが全く分からなかった。王騎将軍を演じた大沢たかおは山﨑とは逆に増量して役作りをしたらしいが、脂肪太りが見え見えだったのはどうかと思った。

音楽のやまだ豊はまだ若い人らしいが、壮大な画面に決して引けを取らない素晴らしい音楽を付けており、非常に心が震えた。日本人らしからぬ作風で、ハンス・ジマーを彷彿とさせる見事なスコアを書いていた。今後も注目したい作曲家である。

監督は「GANTZ」二部作や「アイアムアヒーロー」を手がけた佐藤信介で、コミック作品の実写化の腕を買われての起用らしかったが、見事に期待に応えていたと思った。ただ、前述のように致命的な負傷に見えた人物が死んでないという例が多発したのは頂けないと思った。それから、武器をアップにするときは、切れ味を感じさせるようにして欲しかった。原作コミックの 1/10 程度が映画化されただけなので、続編があるかも知れないが、戦闘規模は益々大きくなるばかりなので、スケール感が出せるかどうかが鍵となるだろうと思う。
(映像5+脚本4+役者5+音楽5+演出4)×4= 92 点。

アラ古希