「パリの美しさと醜さ」ディリリとパリの時間旅行　ローチさんの映画レビュー（感想・評価）

本作の舞台はベル・エポックの時代のパリだ。ベル・エポックは良き時代という意味だが、その名の通り産業革命が進み、消費文化が栄え、多くの芸術が花開き、パリが最も華やかな時代と言われる。ミシェル・オスロ監督はそんな時代の光と影を描き出した。背景はオスロ監督の撮った写真をコラージュして作られているそうだが、その美しく華やかなパリの姿に魅了される一方、パリの中心街では見世物小屋で混血の少女が働かされている。そして、「男性支配団」による少女誘拐事件が勃発、彼らは地下に少女を幽閉し、教育と称して洗脳しようとしている。華やかな時代も一皮むけば醜いものが潜んでいるという痛烈な皮肉だ。
しかし、主人公の少女の天真爛漫さと勇気に救われる。遠い異国からやってきた彼女が、様々な有名人の助けを借りて誘拐された少女たちを救い出す過程を痛快に描いている。パリの美しさと醜さも含めて、オスロ監督の街への愛が伝わる素晴らしい作品だ。