「タイトルなし」Girl ガール もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
大人のトランスジェンダーの映画はそこそこあるけれども、思春期にあるトランスジェンダーを描いた映画は少ないのではないか。シスジェンダーも思春期には自分の内面と変わっていく身体との折り合いに悩むのが普通なのにトランスジェンダーであればその葛藤はより一層激しいであろう。しかもララはあまり話さない。話しても「大丈夫」というだけ。でも、大丈夫でないのは、その焦燥感は、表情・仕草そして踊りを見ていればわかる。映像で語る「映画」である。彼女の焦燥感・意固地さは周りの大人にも伝わっている。大人は大人のアドバイスをする。でもララには通じていかない。誰がみてもララは女の子にしか見えない。大人たちはその外見に惑わされてララの内面まで達しきれない。父親でさえ。しかしララにはわかっている。彼女には他の生徒にはないギャップがあることを。自分の性と身体の同一に何ら悩むことなく踊りに集中できる同級生との間のギャップを。練習への人一倍の努力でもそのギャップが乗り越えられないとわかったとき、彼女はあの行為に走る。あの時ララがあげる苦痛の呻き声は肉体の痛みだけから出たものではないのだろう。でもその痛みと引き替えに彼女は解放される。ラストの彼女の落ち着いた、でも凛として歩いて行く姿は感動的さえある。(BGMが市川昆版『細雪』と同じなのは面白かったが。)
コメントする