劇場公開日 2019年5月17日

  • 予告編を見る

「高校生の問題意識の高さに感激!」僕たちは希望という名の列車に乗った ku-chanさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0高校生の問題意識の高さに感激!

2019年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

本当の話をベースにしているようだが、第二次大戦後ナチス崩壊のドイツではベルリンの壁ができる前は東西両ベルリンは行き来はできたわけで、映画ではクリスマス/正月シーズンは両ベルリンの往来も厳しくはなかったと言っている。
この時代の東側で生きていた人々の話だが、社会主義国家にするために思想の統一、ナチスの全体主義をいいスケープゴートにしてロシアの力を借りて、(ロシアが抑圧していたのかも?)ロシア体制を東ドイツに作っていく過程。東の見解ではロシアがハンガリーブダペストの動乱を抑止する力があるとみているし、西は全体主義の賜物になっている。

そして、米国、英国などの西ドイツと国を完全に二分する思想抑制下の東の人の心を描いているので、興味深い。ドイツ映画はナチスの全体主義時代や批判、そして、現在の統一後の映画しか鑑賞したことがなかったし、この1956年の時代の東西ベルリンの境界線(Stadtgrenze)に住んでいた人々の生活の 映画は皆無だったのでドイツ映画の別の政治的思想弾圧の一面を見た気がする。

好奇心のある高校卒業を控えている生徒たちの情報収拾力、多数決で行動を起こす民主主義(?)問題意識の高さ、自分の周り以外にも目を向けることができる(意識化できる)などが、大多数の生徒を西ベルリンに向かわせたんだと思う。
ここで、テオ(労働者の息子で、兄弟が彼を含めて三人の役)の多数決という捉え方が経験により成長したのがいい。全員退学させられた時、テオの案で、西に向かおうと。でも、彼は一言、自分の意思で行きたい人だけがいこうと。そこで、そこで多数決に従うやりかたを取らず、自分の意思を尊重するもっと民主主義的なやり方で他の生徒に話している。そこがテオの将来をより明るくしている気がする。

戦前のドイツはヒットラーの全体主義や連合国、ロシアの侵略、ユダヤ迫害など自分の立ち位置をどこに置いたかで人生が変わってくる動乱の時代だったようだ。そこから、はびこる『裏切り』も日常茶飯事のようだったに違いない。その中で、テオの父親だけは労働階級の動乱(Uprising 53)について一切、口にしないが、テオの友達カートを裏切る行為を自分の子供可愛さで興奮のあまりテオに進めたが(テオはそれをしないことは承知だった。)結局、父親本人も密告しなかった。テオを見ていると父親と同様に善悪をよく理解しているし、それにそって行動をしている。カエルの子はカエルということわざがあるが、倫理的な精神構造を引き継いでいる。

サッカーで有名なハンガリーの選手Ferenc Puskas が殺されたと西のニュースで伝えられたが実際は死んでいなかったと東のニュースが伝えた。後でネットで調べたところプスカスは2006年ごろ他界している。東西でお互いに洗脳しあっていたのかもしれない。

Socialjustice