盆唄のレビュー・感想・評価
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地域文化の楽しさと伝承の難しさ
震災、その復興に関するドキュメンタリーを、TV、映画でたくさん見てきた。本作は、その中でも秀作の一つ。 盆唄という地域文化に焦点を当て、移住してきた歴史、移住していった歴史、避難移住という強制移住の今が壮大なドラマを作る出している。ダイナミックであり、観ている人にも望郷の念を起こさずには置かない。
来んさい来んさいハワイに来んさい、わしらは皆んな広島じゃけぇ!
三部構成のドキュメンタリー。一部は、福島震災で「解散状態」にある町の盆唄を、ひょんなキッカケからハワイの日系人に伝承する話。二部は、双葉町のとある家系のルーツは越前加賀にあり、天保時代の「移民」だったと言う話。日本昔話風の、紙芝居アニメになります。三部は双葉町各地区の盆踊りが一堂に集い共演する話。 一部がヤバイ。ハワイ「王国」への移民は明治時代に始まり、二世世代も含めて太平洋戦争を挟み激動の時代を生き抜く。気がついた時には泣いていた。理由は分からないけど、とにかく涙、止まらんかったです。ハワイの日系人が、盆踊りしてるだけなのに。一世の方達が、どんだけ困難な時代を生きて来たことかを思うとね。 私達は日本人。何処へ行っても、何をしていても、どんな境遇にあっても、日本人。町からは、放射性物質に追い出された。人々は散り散りになった。でも私達は双葉の人間だ。だから、この盆唄を遺す。そんな話。 二部も同じ、基本は。ただ、加賀から移り住んだ、のえは80歳を過ぎて言う。加賀は懐かしが、故郷は双葉、だと。これから、双葉の人達がどう生きて行くかの、一つの答え。 一部が大ホームラン。二部以降は、チョボチョボ。メインキャラの方のガレージにあった黄色いFDがカッコ良かったとです。
ドキュメンタリーの概念を覆す映画
てっきり双葉町の盆唄をハワイに伝えるドキュメンタリーだと思っていたのですが、それだけにとどまらないスケールの“映画”でした。 一人の人物や一つの物事を追い、そこから監督がすくい上げたテーマを見せてくれるのがドキュメンタリーのイメージでしたが、本作はどんどんスポットライトが移動していきます。 そして通常のドキュメンタリーではありえないラストシーン! 暗闇に鳥肌が立ちました。 故郷の双葉町に戻れず、避難先での生活をおくっている方々。 でも、その双葉もかつては富山からの移民を受け入れた土地だった。 いろんな事情を抱えて故郷を離れ、新天地で長い時間をかけて根を下ろす。 祭りへの参加は、その土地の者として認められたという証なのかもしれませんね。 ふと、亡くなった祖母の言葉を思い出しました。 「ずっと自分は根無し草だと思っていたけど、やっと居場所が出来た気がする。」 故郷から遠く離れた土地で結婚し、疎開先で夫を亡くし、女手一つで5人の子供を育てあげた祖母。 そこから一緒に上京した息子が結婚して私が生まれ、学校に通うようになり、地域の行事に参加し、祭りの準備に協力する。 顔見知りが増えて、自分がどこの誰なのかを近所の誰もが知っている。 きっとそれが祖母にとっての“根を下ろす”だったのだなぁ。 土地を持たない私なんかだと、近所づき合いは面倒…むしろ誰も私を知らないでいて欲しいと思いがちだけど(^^;; そもそも盆踊りは生きてる者を結びつけるだけではなく、自分の先祖やその土地で心半ばに亡くなった人達の鎮魂なのだから、 同じ振り付けで踊り続ける行為をトランス状態になり易くする儀式と捉えると 横の繋がりと縦の繋がりの中心にヤグラがあってその周りを円が取り囲んでいる。 円は始まりと終わりを繋いで永遠を表し、生と死をも繋げようとする。 盆踊りとは、とてつもない奇跡とエネルギーの集まりのような気がして、 自分達の命と向き合う為にも、祭りのリズムを絶やさぬよう、入れ替わり立ち代りヤグラに立って歌い継いでいくべきものなのだと感じました。
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