劇場公開日 2019年4月5日

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「時代は変わる、馬鹿は変わるな。」麻雀放浪記2020 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5時代は変わる、馬鹿は変わるな。

2019年4月29日
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鑑賞方法:映画館

笑える

原作小説の『麻雀放浪記』はおろか麻雀のルールすら
知らない自分だが、やたらギラついた映画を連発
してる白石和彌監督と、映画への造詣が深い上に
イケメンという許し難いスペックの俳優(←持たざる
者目線)、斎藤工主演というタッグに惹かれて鑑賞。

出演者のピエール瀧を巡り色々報道されていた本作。
あの件については様々な意見が出ていたけど、ま、
いつも通り作品単体としてレビューしていきます。
……とはいうものの、そんなグッと眉を寄せずに
「はー、くだらねーッ!」と笑えば良い映画でした。

...

あらすじ。
1945年の戦後日本で、麻雀に命を賭ける主人公・テツ!
ある夜テツは凄腕雀士たちとの対局で大技・九蓮宝燈
(ちゅうれんぽうとう)を成功させるが、その時に
発生した落雷の衝撃により、ディストピアと化した
2020年の近未来日本にタイムスリップしてしまう!
九蓮宝燈を成功させれば1945年に戻れると考えたテツは、
ヒロイン・ドテ子と共に、強敵との麻雀対決に明け暮れる!
くしくもその時、中止された東京オリンピックに代わる
国民的競技大会として、世界最強の雀士を決定する
『麻雀オリンピック』が開催されようとしていた……!

……は?

...

『日本で一番悪い奴ら』『孤狼の血』など、'70-'80年代の
邦画を彷彿とさせる"無消毒"感が特徴的な白石監督だが、
近未来SFギャグ映画である本作でも持ち味は健在。
今日日地上波でやったら色んな方面から怒られそうな
あんなシーンやらこんなシーンだらけだし、
くわえて今回は、もうどこからツッコめば良いのか
困ってしまうような荒唐無稽なギャグだらけである。

麻雀が国民的スポーツになっていたり、人工知能に
麻雀仕込んで世界征服みたいなノリになっていたり、
『麻雀オリンピック』なのに日本と中国の2ヵ国から
4人しか出場してなかったり、バカバカしさが全編に
満ち満ちておる。途中で何度「一体俺は何を
見せられているんだ……」と己に問うたことか。
白い内装+白い服装+白い軸無しセグウェイで表現した
SF的風景の激安感も個人的に笑いのツボで危なかった。

『翔んで埼玉』同様、こういうギャグは役者さんが
真剣そのもので演じるからこそ笑えると思うのだが、
その点で斎藤工、ベッキー、ピエール瀧、矢島健一は
非常に真剣な顔で非常にバカバカしくて良い良い。
なかでも斎藤工演じるテツは、色々と間違った方向に
振り切れている。強敵を引き寄せるため、“ふんどし王子”
としてメディアを席巻する流れは笑いを堪えるのに
必死だった。いくらイケメンでもあんな
変態ギリギリファッション流行るかいッ!
そこからなんだかんだあっての謝罪会見の流れも
超バカバカしい(この映画、謝罪率高過ぎない?)。
あとね、終戦直後から来た割にはタマゴの食べ方が
勿体無い。どうしていつも握り潰しちゃうの(笑)。

だがテツのなりふりかまわない麻雀馬鹿っぷりは、
どんな時代だろうが、どんな非難を受けようが、
好きなものを貫き通すという点で、なんだかんだ
格好良い所があるとも感じてしまう。
それに満載のギャグのうち幾つかは、すぐに
メディア発信のブームに乗っかる人々やら、
モラルを振りかざして安全圏から執拗に個人
を袋叩きにする集団心理やら、割とブラック
な笑いにまで昇華されている所が妙味。

...

とはいえ、総合的には「くだらねー!」と笑えば
良い映画なのでそこまでの高尚さやガッチリした
出来を求めちゃいけないです。笑いたい時の
息抜きとして観るくらいが丁度良いかな、と。

中弛みはあるしラストも粗いというかブツ切り
な感じだし(ドテ子どうなったの?とか)、
それに……下ネタが苦手な人ならドン引きするような
お下劣ギャグ満載なので、正直誰にでもオススメとは
いきません。まあ実は自分はそういうのニガテなので、
そこも含めて今回イマイチの2.5判定な訳ですね、ハイ。
なかでもベテラン怪優・竹中直人さんは登場シーンの8割が
ド下ネタでしたね。とても楽しそうで良かったですね(白目)。

...

以上!
イマイチの2.5判定とさせていただいたが、
麻雀好きで下ネタOKで、時代に逆行するような尖った
ギャグ映画が観たいという方なら3.5~4.0位かなあ。

まあね、観たくない人は観なけりゃ良いし、
観て笑いたい人は観て笑えば良いと思います。
その選択すらできなくなったら、それこそディストピア。

<2019.04.06鑑賞>

浮遊きびなご