「和製コン・ゲームの佳作」コンフィデンスマンJP keithKHさんの映画レビュー(感想・評価)
和製コン・ゲームの佳作
コンフィデンス・ゲーム(Confidence Game)、略して「コン・ゲーム」という、騙し騙されてゲームのようにストーリーが二転三転する、スリル性とサスペンス性に加え滑稽さと痛快さを伴ってカタルシスを得るジャンルの、本作は典型的作品です。
映画では、『スティング』(1972年)がその代表的傑作ですが、ストーリーのコアとなる“詐欺”をチームで仕掛けることとなり、各メンバーの個性の魅力を際立たせることや、抑々が犯罪ゆえにアクションを奔放に盛り込むこととなって映画の醍醐味が増し、近年の『M.I~』『オーシャンズ~』のように多くがシリーズ化されています。
コン・ゲーム映画の魅力は、主人公の詐欺師チームが如何に標的を騙すかではなく、如何に観客を騙すか、そのための伏線の然り気ない配列の巧妙さに尽きるといえます。
本作は、CXの看板といえる”月9“で昨年放映され評判となった人気ドラマの映画化であり、長澤まさみ、東出昌大、小日向文世等々のドラマそのままのキャスト陣及び制作スタッフゆえに、ストーリー展開は手際よく、引きと寄せを巧妙に組み合わせた画面展開と鋭利に切り替わるカット割りは緊張感と共にスピード感に満ち、観ていて飽きさせません。古沢良太脚本による筋立ても非常によく出来ており、観客を騙す手口と仕掛けは見事に洗練されて仕上がっていると思います。
「愛」と「金」の相剋、という深遠な命題を一見引き摺らせながら、呆気なくはぐらかす一方、往年の名作『ある愛の詩』(1970)を擬えた台詞を塗す等、あの手この手を縦横無尽に繰り出して観衆を擽り続けて飽きさせない構成は、軽快で心地良いBGMと合わせて一級の娯楽作品といえます。
その主役を演じる長澤まさみの、硬軟自在の演技の抽斗の深さと広さを再認識しました。
ただ元来TVの1時間ドラマ仕立てを2時間の映画に引き延ばした為に、スジが複雑になりもたつき感があってもどかしさが感じられ、ふんだんに捻りや凝った仕掛けが施されている分、ストーリー展開にシンプルさが欠ける気がします。エンターテインメント映画としては、やや上品な仕上がりで、荒事と色事が盛り込みきれていないのも、そのせいでしょうか。
また三浦春馬の役に求められる、狡猾さの一方での傲岸不遜さ、高慢さ、気障な嫌悪感、唯我独尊さが不十分で、どうしても『こんな夜更けにバナナかよ・・・』の実直な好青年がオーバーラップしてしまうのが物足りなく感じます。更に悪の権化である江口洋介の、やたらと威圧的で粗暴な強面振りも、抑揚がないままでの一辺倒の演技は却って恐怖感を薄れさせていたように思います。