「いやー…良いっすね!」クリスマス・カンパニー alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
いやー…良いっすね!
クリスマスものはやっぱ、明るく夢のある話が多いので、見終わって「良いもん見たなー」と思えて良いですね。正直見た目が安っぽい作品も結構あるんですが、それでもクリスマスものは何だかんだ最後まで見られてしまう気がします。安っぽくてもCG満載でも、夢があるからかな。間違いなく「人に夢を見させたい」という気持ちのもと作られるからかもしれませんね。
2017年製作、フランス・ベルギー合作なんですが、本国フランスでは大ヒットしたそうです。日本じゃ劇場未公開でDVDスルーだそうで、全然知られてませんが…DVD発売当時は日本でも一応宣伝してたんですかね?
あらすじ:
クリスマスの4日前、プレゼントの用意に大忙しのサンタとエルフ達。サンタは子供からの手紙を読み、それに沿ってプレゼントを用意するが、プレゼントを作るのは、中身から梱包まで全てエルフ達の仕事。サンタは子供達を喜ばせたくて、プレゼントをより豪華にしようと工場のエルフ達に無理難題を吹っ掛けてばかり。ある日、過労のせいか1人のエルフが熱を出して倒れてしまう。するとそこから堰を切ったように、他の9万2千人のエルフ達も一斉に倒れてしまう。何事かと妻のワンダに訊けば、「エルフは1人が倒れると他も皆倒れてしまう。大昔にも同じ例があり、その時はビタミンC豊富なフルーツを食べさせたことで治った」と言う。人間界に興味津々のワンダは「人間界にビタミンCを取りに行くべきだ」と強く勧め、今まで眠っている子供しか見たことがない人間嫌いのサンタは渋々空飛ぶソリで人間界へ。嵐に遭いパリに不時着したサンタは仕方なく、パリで9万2千人分のビタミンCを手に入れようとするが、不審者扱いされ捕まってしまう。そこへ、問題を起こしてばかりの弟ジェイを引き取りに来た弁護士のトマが、ボケ老人と勘違いしたまま親切にアドバイスをしたことから、人間界について全く無知なサンタに頼られてしまい、トマとその妻アメリーがサンタの面倒を見ることになるが…
ずーっとトラブル起きっぱなしで落ち着く間もない映画ですが、クリスマスものはこういうドタバタ劇多いですね。サンタが間抜けだったりトナカイが間抜けだったり、あとは嫌な奴が出てきて問題起こして…という具合で。
今作もサンタがなかなか間抜けで、ジェイもめちゃくちゃ問題起こしまくりの面倒臭い奴で、トマはジェイに、アメリーは親戚にそれぞれ振り回されます。で、そこに更に無知サンタが加わるので、そりゃもうドタバタです。
クリスマスものの何が良いって、子供が「すんごく」って程でなくても大抵良い子で、サンタのために頑張ってくれたりするんですが、今作では主人公は(サンタを除くと)多分トマ。アメリーも子供達もかなり関わってはいますが、トマはサンタとの語らいがよく入ります。
レビュー見てると、トマの家族にはビタミン探しを手伝ってもらったからお礼を弾んだんだろうけど、迷惑かけまくりだったジェイへのプレゼントはオモチャだったから、多分ジェイはまたトマに嫉妬して嫌がらせするんじゃないかということを書いてる人がいたんですが、多分ジェイはオモチャでも充分嬉しいんじゃないかと思います。
というのも、わざわざ作中で「ジェイは幼い頃に両親を亡くしたから、クリスマスにプレゼントをもらったことがない。サンタを信じてない」という話が出てきます。サンタは世界中の子供のことを覚えてるし、子供の頃に頼んだプレゼントも覚えてるそうですが、ジェイからは一度も手紙がきたことはないとのこと。
親が亡くなったことで「サンタなんかいないんやっ!(涙)」と捻くれていたジェイにとっては、大人になった今でもサンタからプレゼントを貰えるなんて、オモチャでも多分嬉しいでしょう。ていうかあれだけトラブル起こしておいて、プレゼント貰えただけありがたいやろ(小声)。
まぁ、本物のサンタと知ってサンタの私物をパクるような性格なんで、改心したかどうかはわかりませんが…
サンタ界のシーンは多分ほぼCGですが、そんな安っぽいCGでもなく綺麗でした。いらんところにCG使って「オラオラ綺麗だろ」って感じもなく、必要に応じてトナカイが飛ぶシーンやプレゼント作りのシーンだけCGなんですが、これがポップで可愛いところと美麗なシーンとで、視覚的にも飽きさせません。
完全に小さい子向けというわけでもなく、どの年代にも、家族で見ても楽しめると思います。主人公が大人なので大人にも刺さる台詞があったりして、ちょいちょい厳しいジョークもあり、子供は子供で、大人は大人で楽しめそう。
ただ、子供も見るのでやはりジェイの改心・反省するシーンは欲しかったなぁと。日本で出てくるような「ご愛嬌キャラ」って感じではなくマジの「ウザキャラ」なので、あれはただのトラブルメーカーじゃ済まされないと思うんですけどねえ。
また、アメリカ映画みたいに「同性愛者ってハッキリ出して良いの?ダメなの…?」みたいな変な遠慮がなく、前情報なく普通にバーン!と出してくる潔さ、良いですね。最後までカップルだと全然気付きませんでしたし、「この二人そういう関係だったんだ~(・∀・)ニヤニヤ」と思ってしまうような、ちょっと可愛いわからせ方がまた良い。
アメリカ映画だと誇張して同性愛そのもので笑わせようとしたり、馬鹿にしてませんよ!とばかり妙にシリアスだったりする作品も多くて、それがまた「同性愛者=変な奴ら」に繋がってる気もします。最近は流石に同性愛そのものをネタにはしないと思いますが、それでも「自然な同性愛者の恋愛ってどんな感じ?」と考え過ぎて、逆に不自然になってる感じは依然としてあります。
ただ男女の恋愛を同性に変換したのともまた違うだろうし、だからといって異性愛者が想像する同性愛者の苦悩だけ描いても、本人達からしたら「いや、ちゃうねん」となるんだろうし、難しいんでしょうけどね。
アメリカみたいに「同性愛者の表現って視聴者にどのくらい受け入れられるんだろう?」と迷ったら、今作くらいの可愛いと思える表現をガンガン入れてって、そこから表現を増やしていくのも手なんでは、と思わされました。多分、今作の表現で不快に思う人はいないんじゃないかと思います。異性愛者でも同性愛者でも、こういうことがあったら確かにクスッと笑ってしまうだろうし、わかるわかる!となるんじゃないかな。
全体としてはやや中弛みがありますし、ずっと落ち着きがなさすぎる気もしましたが、クリスマスに見て気分を盛り上げるのには良いかも。
自分はクリスマス前に見ようと思っていたのに完全に時期を外してしまい、正月も過ぎた今頃になって見ましたが、楽しめました。まだ寒いし!(適当)
しかし9万2千人のエルフ達、ほとんど出番がないんですが(すぐ倒れるので)、エンディングでなかなかのダンスを披露してくれます。もしや本職はダンサー?
作中ではほぼ出番ないし、ぜひエンドロールのエルフダンス見てあげてください…
エンドロール後のちょっとしたオマケも面白かったです。いるよねああいう親戚…