「死して、何が残るか?生きて、何を残すか?」十二人の死にたい子どもたち 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
死して、何が残るか?生きて、何を残すか?
最初に発言します。
取り扱っている題材が題材なだけに
センシティブに評する事もあって、
評価が二分するのは仕方のない事です。
この作品のポイントはいかに、
「自身の等身大を見出だすか」、だと思います。
そういう意味では世間一般、皆さんの評価が低い事に
安心しました。
…だから、わたしは誉めるよ!!
都会では自殺する若者が増えている
今朝きた新聞の片隅に書いていた
…と、衝撃的な歌い出しで綴られる名曲、
井上陽水 作 『傘がない』 1972年…
この年、日本が高度経済成長を遂げた折から
そして現在に至るまで、
自殺者も、右肩上がりに増してるという事実…
自殺願望は、社会の産んだ弊害か? それとも…
文学者・三島由紀夫の最期を描いた、
わたしが敬愛する《若松孝二 監督》作品、
『11.25 自決の日』を引き合いに、
まずは語らして下さい。
1970年11月25日、三島氏は〈日本の在り方〉を
世に問いかけました。命を賭してまで…
劇中、井浦 新さん演じる氏は言います。
「死は、“ 文化” だ!
日本人は欧米文化と違い、命に罪を求めない…
それは、命の美しさを知っているからだ。
…だから、 死にも、美しさをを求める。」
それは〈日本の伝統と、美意識を守るため〉という
強い信念を持って、世間に“メッセージ”を
知らしめるための行為であって、
あくまでも自殺ではなく【自決】なのです…
ですが、普通のヒトがメッセージを伝えるには
ただ遺書に思いの丈を綴っても
ひっそり死んだりしたら影響力はないでしょう…
よほど壮絶な死に方をして報道されるか、
名の知れた著名人で影響力を“先に与えた”
ヒトでなければ…
どんなにメッセージ性が強くても、
手法を駆使して広めても、
影響力を“のちに与える”ことは難しいでしょう…
前置きが長くなりましたが、
本作『十二人の死にたい子どもたち』の描く舞台は、
ある程度閉じられた空間で(密室ではない所がミソ!)
繰り広げられる、
個人的な理由で悩んだ末、
集団的に「死」を成し遂げようとする若者たちの間で
巻き起こる心理サスペンス!?
…ではなく【自己啓発】作品です!!
『ソクラテス式問答法』という対話法があります。
〈 対話によって相手の矛盾・無知を自覚させつつ、
より高次の認識、真理へと導いていく手法 〉
の事を指すんだそうです。
死のうと思って集まったはずなのに、
対話を重ねるにつれ、若者たちの意識が変わり、
《生まれてきたことを後悔》するだけではなく、
《生きてきた今までを否定》することもできない、と
わずかな希望を見出だし、自分たちを肯定し、
彼らが生きていくことを選択した瞬間、
劇場で小さな拍手するわたしがいました!
十二人、個性溢れる、みんな良い子!
物語の設定自体、アンビバレンスな様相なのに、
そこに堤監督らしいディテールを加味して、
若者たち、各々の背景を語るには12人は多すぎるかな?
と思いましたが、そこは簡潔にきれいにすくってあって
一種独特な冲方 原作を見事に、
そして映像として分かりやすく表現しました。
この作品を観て、何のカタルシスも感じない方は
安心して下さい!正常ですよ!!
そして…
この作品を観て、ほんの少しでも前向きになれた方、
映画、芸術、文学、音楽、マンガにアニメ…
サブカル作品の中にも、あなたに合った
【絶望に効く薬】が、きっとある!!
まだ悩んでいる方はどうか…
ひとりで悩まないで、わずかでも勇気を持って、
身の回りのヒトに悩みを聞いてもらいましょう。
相談所でも、NPO団体でもいい。
匿名性を活かしたネットの掲示板でもいい。
とにかく自分の想いを、
誰かに、何かに、ぶつけましょう!
あなたは、決して、ひとりじゃない!!
わたしたちを取り巻くあらゆる問題…
いじめ、家庭問題、交通事故、そして病気…
それらすべての代表として、わたしが言うよ!
『生きて、自分の出来る事を、考えよう』
『あなたの命は、あなたの物だよ』