「可もなく不可もなく」十二人の死にたい子どもたち flying frogさんの映画レビュー(感想・評価)
可もなく不可もなく
原作既読。
原作もタイトルで「12人モノ」と分かるので、おおまかな筋立て(12人全員一致でないと評決できないルール、最初に1人だけが反対し、最後は全員が反対する)がタイトルだけで分かってしまう不利な小説(笑)
従って、この手の話はディティールが命なのだが、原作はミステリーとしてのネタが非常に細かく、謎が解かれた時のカタルシスに乏しいという欠点を抱えていた。
そのあたりを映画化した時にどう料理したか、を期待していたのだが…
結論から言えば、美点も欠点も原作からそのまんま引き継いだ映画。
あるいは、あの少々複雑な原作の種明かしを映像で分かりやすく見せてくれる"だけ"の映画。
かなりページ数が多い小説を2時間の映画に押し込めるので、その分、12人それぞれのキャラクターは若干薄味にせざるを得ないね。情勢に応じて"ボス"を乗り換えるメイコのエゲツなさとか、もう少し丁寧に描写してくれたら…。
アンリの「死にたい」理由は、原作から大きく改変されていた。これはおそらく「大人の事情」というやつなのだろうけど、でもそのおかげで「生まれてくるべきではなかった」という主張から最後の評決に向かう流れが繋がらないためよく分からなくなってしまった。
このあたり、独自のロジックでガラッと変えた方が良かったのでは?
アンリの「死にたい理由」を変えておきながら、その後のロジックを変えないのは、明らかに脚本の手抜き。
橋本環奈はさすが。
マスクを取った時のオーラが違う。若手人気俳優の中ですら、「一般人の中に紛れ込んだスター」のオーラを発散させていた。
ま、これは多分、橋本環奈がマスクを取ったシーンで画面の色調を微妙に変えている、くらいの細工はしてそうだけど(^-^*)
エンドロール中の時系列を整理した動画は、「イニシエーションラブ」と同じ手法だが、二番煎じ感は逃れられない。
「イニシエーションラブ」と同じく、映画が原作の補完説明にしかなっておらず、「映画」を見たという満足感は薄い。
とはいうものの、堤監督ということで最初からあまり期待はしておらず、ハードルはかなり下げた状態なので、特に不満はない。こんなもんか、という感じ。