「ゆっくりと挙がる手に涙」十二人の死にたい子どもたち bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
ゆっくりと挙がる手に涙
シリアス・サスペンスに非ず。ノッケから堤節全開のヒューマンドラマで、若手役者さんも、橋本環奈が置いてけぼり喰らうくらい良かった。
「カメラを止めるな」の木暮のキャッチが「早い・安い・品質そこそこ」だったか。本当に失礼な話なんですが、その時、脳裏に浮かんだのは堤監督です。
前作は、ついこの前の「人魚の眠る家」。人気者ゆえ多作です。そこそこに制作費は食ってると思うけど無駄遣いしてる感はしない。品質は常に一定水準以上で裏切られた事が、ほぼ無い。木暮と程度は違うけど、早くて安くて品質そこそけには違いない。流行作家と言ってしまえば、それまでなんですが、さらっと「命」を底辺に物語を組み上げる「堤の工法」が、俺は好きです。
「12人」は期待以上の品質で良かった。
しかし、ヘルペスで???ってのには参った!すっかりHIVかと。それと、「シノちゃん」では吃音をからかっていた萩原利久が吃音役だったのには笑ってしまった!
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追記
最後の決を取る挙手のシーンが、各役者さんの見せ場でした。
自分自身の内心の変化に戸惑いつつも、前向きな変化を受け入れ瞳が輝きだす橋本環奈。ふてぶてしさは変わらずも攻撃的な視線は和らぎ、子供の勢いで挙手する坂東龍汰。この場で知った人の優しさに涙し、自分の愚かさに俯向き、また涙する黒島結菜。ずっと釣り上がっていた目尻を下げ、母性すら感じさせる杉咲花。
この場面の杉咲花と黒島結菜、良かったです。新田真剣佑は全編通して良かった。日本映画界の未来は明るい!かなっと。
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1/28追記
「こどもの探偵ごっこ」的な推理ドラマ部分は置いといて。
青少年の自殺の実数を調べてみたら、結構精神的にキツイ。H29年統計の自殺者数は21,681人で、うち未成年は488人。原因で一番多いのは「学校関係の問題」で169人。過去統計の傾向から、「アイドルの自殺」と「いじめ自殺の報道加熱」は、自殺を誘発し自殺者数が跳ね上がることが明確に読み取れる。よって報道が手控えられているあけであって、いじめなどの学校問題の自殺は、ほぼ二日に一件起きています。以下、健康問題93,家庭問題91,男女問題(後追い含む)47,勤務問題24,経済・生活問題14,その他が50。
自殺の原因は複合的な要素が絡んだ結果ながらも、何か一つの事がクローズアップされ過ぎる傾向があると指摘されています。しかしながら、その一つを取り除いてあげることが、自殺を食い止める上では、極めて効果的なんじゃないかと思ってます。
子供たちの思考は稚拙ですが、それゆえの怖さがある訳で。そんな事で死を選んだのか、と残された者は、その死の事実だけを目の前に愕然とするしかない。
You will never walk alone
子供達の自殺を止められるのは、同年代の子供たちなのだと思った。この映画を請けたのが、堤幸彦監督で良かった。飾りも誇張もなく、シンプルにストレートに主題が伝わって来ました。この主題、否定したくないです。
一つだけ大声で言いたいのは「あんな馬鹿な予告編を作ったのは、どこの誰なん?」
kossykossyさんへ
あの予告からは、サイコパスもの以外の発想は出来ないでしょ。堤監督なら命がテーマのヒューマンドラマと信じていましたが、正直言ってあのラストは予測できませんでした!