「家族の相互理解は深い」長いお別れ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
家族の相互理解は深い
機内でうっかり見てしまい、静かに大泣きしました。
校長先生まで勤めたしっかりしたおとうさんが認知症発症。丸ごと受け入れられるおかあさんがとても素敵。
7年間にわたる家族の理解が描かれています。
最初は父親の変化に少しショックを受けつつ温かく接する次女のふみと、海外駐在に家族帯同中で自身も余裕のない長女のまり。
国内にいるから何かとお世話する役割を担ってしまう、蒼井優演じるふみなのだが、自身の夢や恋愛はもがきながらで順調とは言えず何かと打ち砕かれていて、、でも、認知症ながらも、娘が前を向ける言葉がけが自然に出来るおとうさん。
アメリカ暮らしにいまいち馴染めず、息子も思春期に差し掛かり育児が思うようにいかず、夫は無口で、孤独を噛み殺して暮らしている、竹内結子演じるまり。おとうさんの認知症がきっかけでたまに国内に帰省するが、孫との信頼関係を自然に築いたり、テレビ電話を通して、娘の弱音を聞くおとうさん。
認知症の進行によっておとうさん自身の言動の変化も大きく、家族はかつてのおとうさんからの変化に戸惑いながらも理解が求められる状況なのだが、それと同じくらい、7年間移りゆく家族の生活や心境の変化に、認知症のおとうさんが無意識に深く関わり、良い影響を与えて支えている。
この構図がとても素敵で、おとうさんとおかあさんの揺るがない仲の良さが、もういい大人だが悩み多き姉妹のメンタルを支えている。どこまで正気かわからない状態なのに、数十年前の結婚を申し込むやり取りを再びおかあさんにするおとうさん。
認知症介護というと理性ある行動を取れなくなった存在の面倒を見る面ばかりが浮かぶが、実際は、緩やかな進行の間に、家族での様々な思い出が詰まっていて、ぼけてしまっても親という存在は最後まで親なんだなと。
おとうさんからの読書好き、おかあさんからの料理好き、季節の葉を読書中の本の栞にするなど、言動や嗜好面でも家族の繋がりを感じる。
月日が過ぎ、地理的に離れても、家族は繋がっている、血も繋がっていると感じさせる作品。