「くりまるな! ゆーっと! ね♪」長いお別れ 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
くりまるな! ゆーっと! ね♪
認知症の…
徐々に記憶も、感情も、遠のいていく様を
『長いお別れ ~ A Long Goodbye ~』
という言葉に置き換えても…
それは、悲しいお別れの段階だけではなく
ヒトとして、こころを豊かにしてくれる
貴重な時間のことなんだ、とわたしは思いました。
記憶や感情を失っても
ヒトがヒトである以上
けして「こころ」だけは失うことはない…
…だから、メリーゴーランドのシーンは
劇中の家族にも、皆さん鑑賞者たちにも
そしてわたしにも…
胸に刻みこまれた「心象風景」として
こころに留まり続けることでしょう…
《 家族愛 》を題材に作品を撮り続ける
中野 量太 監督の傑作がまたひとつ生まれましたね!
姉・麻里の闊達なところはお母さんに
妹・扶美の本好きで数字に細かいところはお父さんに
それぞれ似たんだろうなぁ…
と思わせる手腕はさすが!
物語を彩る “ 小物使い ” が実に効果的かつ叙情的!
でも本作において「伏線、および回収」
なんて言葉は適さないと思いました。
なぜならば、それらは
家族が共に重ねてきた時間のなかで
家族だけが獲得し、知りえる〈合言葉〉の象徴なのだから…
実際、家族を介護してる方々にしか分からない苦労
辛さというものがありますし
今後、家族が要介護になりえる不安を抱えている世代
しいては社会全体が直面する問題を描いていて
わたし自身、観ていて正直しんどかったですが…
家族からもたらされる幸せというものは
家族しか得られないものだと…
改めて本作『長いお別れ』を鑑賞して思いました。
難役をこなす山崎 努さんの思慮深さと
経験則からなる確かな演技が光る!
重くなり過ぎがちなテーマを
明るく朗らかな役どころでもって
本作に彩りを与えてくれた松原智恵子さん
家族のなかで一番
喜怒哀楽がはっきりしていて
観ていて気持ち良かった!竹内結子さん
蒼井優さんの好演にありがとう!と言いたい!
そして実生活でもお幸せに!