劇場公開日 2019年11月15日

  • 予告編を見る

「食い合わせは良い筈だが……。」地獄少女 ねーやんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5食い合わせは良い筈だが……。

2020年7月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

原作も監督も、個人的には好み。
正直『不能犯』が駄作とまでは言わないが、いまいちだったので、今作も少し不安はあった。

しかし、いざ視聴してみると、なるほど地獄少女で描かれる地獄通信のシステムや死生観などは、それまでの白石監督の作品で描かれてきた世界観とかなり食い合わせが良いことが分かる。
少なくとも、白石クトゥルフや霊体ミミズ側から、地獄少女の世界を解釈することは難しくない。

ただ、この映画1本だけでは双方の魅力を出力することは難しかったのか、結果的に言わばパイロットフィルム的な作品になっている。
本来の地獄少女の魅力、そして白石監督の魅力、そのどちらも悪く言えば中途半端であり、良く言っても序章に過ぎない

折角、工藤仁まで持ち出して、事件を負う役割(原作にもいる)を登場させているのだから、もう少し地獄通信のシステムに踏み込んでもバチは当たらないのに、あえてやっていない。
地獄少女側をあくまで得体の知れない存在として「描かない」として、では、本来『地獄少女』が持っている人の業の部分と、それを踏まえた上での地獄通信の無慈悲さはどうだろうか。

これも、果たして足りていない。
強いて言えば、恨みの連鎖や、糸を引くかどうかの気持ちの揺れ具合、対極に位置する許しや善の部分は、あった。
しかし、残念ながらそれらと密接に関係する地獄通信システムの“人を殺す道具”としての部分はやや弱かったように思う。これには当然、オミットした地獄少女側の要素が不可欠だからだ。
通信の依頼者に対し、先ず地獄を味わわせるオリジナルの演出は、非常に良かったが、それでも弱い。

良い部分は勿論ある。質も悪くない。しかして足りない。

ねーやん