「生々しい描写の王道ストーリー」ゴッズ・オウン・カントリー KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
生々しい描写の王道ストーリー
閉塞的な舞台で繰り広げられる若者の恋愛と成長を描いた作品としてかなり王道。
ブルーグレーのトーンと淡々とした空気がわざとらしく感じるくらい。
即物的な行為の始まりと、普通に暴言な掛け合いの言葉以外は二人の性別を特別視しない姿勢が良かった。
主人公ジョニーはだいぶ不器用で性格も良くない。とにかく素直じゃない。
大事な現実から目を背けて目先の欲望にありつく姿はかなりだらしなく見えるけど、身に覚えもある気はする。
酒場のシーンは本当に最低。
正直、私が男性の欲望についてあまり深く理解していないからか結構腹立たしく思った。
そんな彼がゲオルゲと出会ったことで人間的に成長して、変わろうと努力し始めるのがいじらしい。
ルーマニアの農園にて、間際で引き返すことができてよかった。ちゃんと謝りなね。
ゲオルゲの全て包み込むような優しさに惚れ惚れ。
外見からしてセクシー。
仕事も料理も人の扱いも上手くて、こんな人と過ごしたらそりゃもう離れられないじゃない。
パスタの味調整までやってくれるって…甘やかされたい。
最初は終始しかめっ面をしていた二人がどんどん表情が柔らかくなり、ニヤッと笑い合う仕草にキュンキュンしてしまう。
性描写、酪農描写共に生々しく肉感に溢れているのが好き。
変に美化されるよりもリアルな方が良い。ビジュアルの力が強いので映画のアクセントにもなる。
羊の出産シーンは本当に凄い。
あんなの素手でやって大丈夫なのか。
父からの言葉と祖母の渡したメモ、直接的な言葉はなくとも暖かく受け入れてくれる家族。
身体は不自由でも親としての威厳を保ちたい父の、発作に倒れた後も眼光だけは鋭くするように頑張るのが痛々しい。
風呂のシーンで「すまないね」と言った時に彼の中で何か一つ越えたというか、息子の世話になる覚悟ができてポンとチカラが抜けたように見えて安心した。
「よく頑張ったな」の言葉が嬉しい。
ゲオルゲがあまりにも出来るヤツなスーパーダーリンで、流石になんだか都合の良い存在になっている気もしてくる。
少女漫画系BLのようなストーリーは良かったけれど、ジョニーの身勝手感が目立ってしまいのめり込めなかったのは残念。
全体的に好きな要素は多く、ドキッとするシーンは楽しめた。
ヨークシャーの光景と薄曇りの空がとても綺麗。