「山田洋次の脚本力」男はつらいよ お帰り 寅さん Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
山田洋次の脚本力
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吉岡秀隆の『なんだ、夢か』っていうベタベタの台詞からタイトルにいったところで震えたの。寅さんって、こういうベタさをうまく見せるよね。
吉岡秀隆は「こいつヘタレなことばっかり言ってんな」ってキャラなんだけど、寅さんの血をひいてる感じでいい。
それで後藤久美子に会うんだけど、ゴクミの芝居ひどいな。ヨーロッパに行ったエリート設定だから「日本語たどたどしいのしょうがないね」って感じで逃げられてるけど。
『あのとき伯父さんは』って回想で寅さんの名シーンが入ってくるんだけど、ここは全部面白いの。
博がさくらに告白するシーンがいい。カメラアングルもいい。でも「三年間、あなたを見てました」ってのは今だと「ストーカー?」「キモ!」で終わりそう。生の強い感情をぶつけるのを、今は避けるし。しかし、さくらは走る。いいよね。
夏木マリの出演シーンも良くて「いま、こういう湿っぽい演技する女優さんがいなくなったな」と思ったんだけど、これ、そういう脚本がなくなってんだよね。寅さんは看板映画だから出演決まった女優さんは嬉しかったろうけど、こういう演技力を試されるような脚本やるのも嬉しかったろうな。
あとやっぱり寅さんシリーズのマドンナといえば浅丘ルリ子。さくらが語るプロポーズを受けるところはめちゃいい。それをあっさり流す脚本もめちゃいい。
回想の各シーンは台詞展開がすごくて「山田洋次すげえ!」と思った。あれを書けるのは尋常じゃない。
本編ストーリーは、まあ、なんだかどうでもいいやって感じで終わったけど、回想が楽しいからいいかな。
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