「回想」男はつらいよ お帰り 寅さん U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
回想
時は流れて色んな物が堆積していく。少年は大人になり、少女は世界を駆け回る。
壮大な回想だった。
あらゆるものも人も変わっていく世の中で、変わらないもの、それが寅さんのようであった。
亡くなった渥美さんの時間が動く事はない。それと同じように過去の作品が改編される事はない。その記憶がとても尊いようなものであったかのように思い起こされる。
といっても寅さんフリークでもなく、作品を1本丸々観た事もない。
漠然とイメージしてた車寅次郎に初対面したような感じだ。
結構いい加減だ。
案外自分勝手だし、見栄っ張りだ。
メロン一切れで、お構いなしに周囲を罵倒する猛クリーマーでモラハラも辞さない。
へー、こんな人だったんだ。
だけど、人柄が滲み出てる。
思い遣りと愛情に溢れてる。
前出のマイナス面など、吹き飛ぶ程で、むしろちょうどいい塩梅のスパイスのようだ。
会いたい。
あなたのように人と接したい。
この作品はさすがによくまとまっていて、寅さん不在ながらも、寅さんでやってた事をしっかり抱えてくれてたように思う。
完璧な人間なんかいやしない。
理想も希望も実現する事の方が稀だ。
そんな世の中に間違いはないけども、嫌な事ばっかでもないよ。
楽しい事も苦しい事も人間が運んでくるんだから、そこは偏りはしないんだから。
元気だせよ!
なんかそんな事を思った。
もういい歳したおっさんになったけど、ちょっと「寅さん」を始めてみようかなと、昔の映像を観て思った。
山田洋次監督に聞いてみたい。
なぜこの作品を撮ろうと思ったのか。第1作目を撮った時がどんな時世で、寅さんを創作した意図はなんだったのか。
他のレビューでも時々書くけど、寅さんって日本人の良心のような気がする、と。
うん、やっぱり1作目から観てみよう。
なんか、今よりましな生活とかにはならないけども、今よりマシな人間には成れるような気がする。