「列車て展開されるメタフィクション」ヨーロッパ横断特急 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
列車て展開されるメタフィクション
アラン・ロブ=グリエ監督によるメタフィクションの傑作。電車に乗り込んだ映画監督たちが車内で映画の構想を練る。その映画の構想も電車を使ったものにしようと映画監督が言い出す。その構想と現実パートが入れ子構造のように展開する。どのシーンが映画なのか、そうでないのか撹乱しながら映画は進んでいく。列車爆破というアイデアを思いついた時のやたらキッチュな爆発イメージのあとに示されるリアルな列車の残骸。唐突に始めるSMシーン、二転三転する映画の内容に合わせて、映画全体も右往左往する。
本作の主な舞台が電車であることがやはり気になる。映画の歴史はリュミエール兄弟の「列車の到着」から始まったことを考えると、虚構と現実がないまぜになったこの作品は、リュミエール兄弟から始まった映画と現実の関わり方を再構築しようと試みているように思える。向かってくる列車に驚いた観客は映画を現実と認識したかもしれない。この映画を見る僕も何が現実だかわからなくなる。虚構と現実の境界線を引き直す作品なのだと思う。
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