「「史実は史実、映画は映画」なんですが…」峠 最後のサムライ Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
「史実は史実、映画は映画」なんですが…
2022年公開、松竹配給。
監督・脚本:小泉堯史
原作:司馬遼太郎「峠」
主な配役
【河井継之助】:役所広司
【継之助の妻・おすが】:松たか子
【土佐藩・岩村精一郎】:吉岡秀隆
【前藩主・牧野雪堂】:仲代達矢
幕末、長岡藩を率いて、官軍と戦った河井継之助の伝記映画。
原作の『峠』を著した司馬遼太郎は、
歴史上の人物に明確なキャラクターを与えて、
まるで見てきたかのようにイキイキと描く小説家だ。
幕末の坂本龍馬、土方歳三などのイメージは、
司馬遼太郎が作ったと言って良い。
司馬史観、などとも呼ばれる。
本作の河井継之助像は、司馬遼太郎が作ったそれとも異なる。
1.妻と芸者遊び & 手つなぎ
原作の『峠』にも、このエピソードがある。
もちろん有り得ないことではあるが、
河井継之助、というよりも、
役所広司に寄せた逸話のようですらある。
役所広司に似合うシーンだ。
だが、小説で読むのと映画で観るのは異なる。
このシーンには、苦笑を禁じ得なかった。
役所広司には似合うが、
幕末の譜代大名の家老には似合わない。
2.42歳で死んだリアリスト河井継之助
役所広司では老けすぎている。
(言っておくが、私は役所広司ファンです!)
河井継之助は、「超」のつくリアリストだ。
ロマンチックな佐幕派ではない。
史実では、藩主を説得して、
・京都所司代
・幕府の老中職
を次々と短期間に辞職させている。
「史実は史実、映画は映画」なんですが
つまるところ、
河井継之助の何を描きたかったのか、
よく分からなかった。
ところどころ、
予言めいたことを話すシーンが出てくるが、
「先の読める人」
としてアピールしたかったのか?
保守的な時代劇らしい、重厚な感じは好きだが、
河井継之助を描いた伝記映画ではなく、
役所広司のショーケース映画のようだった。
☆3.0