「ファンタジー設定と重いリアリティ」ポルトの恋人たち 時の記憶 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンタジー設定と重いリアリティ
18世紀のポルトガルと21世紀の日本。その二つが交錯するミステリアスな映画なのかな~、と思って観てみたんだけど。
ぶっちゃけて言うとあんまり交錯はしないね。
その二つの時代は物語のバックグラウンドとして機能しているだけで、関わりはあまりない。
柄本祐(宗次と柊次)とアナ・モレイラ(マリアナとマリナ)、二人が演じる人物の魂が惹かれあい、時を超えて愛が成就するための物語。
ただ、同じように二つの時代に現れている中野量太(四郎と幸四郎)が、あまりにも可哀想なキャラクターで、そっちの方が気になっちゃう。
ポルトガルでの四郎はまだしも、日本での幸四郎の不幸さときたら…。
もっと「クラウド・アトラス」みたいに前世(と言って良いのだろうか)の因果が絡み合ったり、解かれたりするのかな~、と思っていたので少し肩透かしを食らった気持ちもあるが。
どちらの時代にも共通して言えるのは、弱い立場の人々にとっては、「人を愛すること」すらも困難だということ。愛し合う気持ちは確かでも、愛だけでは乗り越えられない苦しみや絶望。
対照的に、豊かな人にとっての愛は、何の憂いも疑いもなくそこにある。少なくとも本人はそう感じているのだ。
それこそが原題である「Lovers on border」というテーマなのだろう。
宗次と柊次を演じている柄本祐が、うっとりするほどカッコいい。可哀想過ぎた中野量太も、演技を初めて観たけどなかなか良かったと思う。
反面、ストーリーと演出はイマイチ気持ちがノってこなかった。魂と記憶が時代を超える、という設定に対してちょっとリアリティに寄せすぎてるように感じる。
まあ、多分好みの問題だけどね。
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