「それでもあなたは彼を疑うのか?」楽園(2019) puccinoさんの映画レビュー(感想・評価)
それでもあなたは彼を疑うのか?
私の想像力が乏しいのか最後まで真意は分からず終始試されてるようで。
考えさせるシーンが多すぎて頭が疲れました。
想像以上に思わせぶりな場面が多く現実なのか妄想なのか最後まで悶々。
観客に想像させて真意を委ねるのが狙いであっても、こんなにも負の連鎖のように都合よくたくさんのタイミングの悪い偶然が起こるのか? と思いながら観ていました。
ちなみに思い出せる範囲で気になった場面をあげると、
笛を買いに行った帰り、途中車を降りて豪士が街を眺めて佇んでいる場面。
豪士が灯油をかぶった後ライターを握りしめながら「愛華」と名前を連呼した場面。
豪士の母親が取り調べ?で事件当日は豪士とずっと一緒だったという嘘を答える回想場面。
「何であんなことをしたの?」と後日母親が豪士に聞き、
豪士が「母ちゃんが言ったろ。ここには楽園がある」と答える回想場面。
取り調べ?が終わって帰る時の豪士の表情が薄ら笑いをしている回想場面。
豪士の母親が紡に向かって「あんたも豪士に救われたんだよ」と言った場面。
酔っ払った広呂と歩いている時、紡が突然後ろを振り向いて何かを見つめている場面。
その見つめる先に愛華?が紡を笑顔で見ている回想場面。
豪士が車内に忘れた紡の小銭入れを握りしめて泣き叫ぶ場面。
愛華ちゃんが消えた日と善次郎が子犬を拾った日が同じ日である偶然に何か特別な意図があるのか?
同級生の広呂は何の病気だったのか?
12年もの年月が経っているのに今頃になってなぜ紡の父親は豪士が怪しいと突然言い出したのか?
また12年前と12年後の豪士の容姿に年月の経過が感じられなかったので時系列が少し混乱した。
なぜ豪士は愛華ちゃんの後をついて行ったのか?
そもそもこの場面は紡が見た現実の回想だったのかそれとも妄想なのか?
結局、豪士が犯人なのか…?
悶々としながらエンディングの歌が流れ出しよくわからない安堵感に騙されそうになりながらこの歌を聞いていたのですが、なんとなく歌詞が頭に残り気になって家に帰ってすぐ歌詞を検索していました。頭の中でもう一度映像を思い返しながら解読して気付いたのですが、この映画の真意はこの歌の歌詞を含めて観客の頭の中でやっと完成するものではないかと。明解な答えとわかるものなどありません。
それでもあなたは彼を疑うのか? あなたは何を信じるのか? と自分自身に問いただされます。
役者の演技力が素晴らしく強く印象に残る場面もありました。
「俺を捨てるの?」母親に向かって口数の少ない豪士が不安に耐え切れず震える体を振り絞って声を上げる場面。
「世の中で一番好きです」善次郎が自殺を図って空を見上げながら初めて妻の問いに本音で答えた場面。
「生きる。生きる。生きる」やりきれない現実と真実と豪士の存在全てを抱えて生きて行くと決めた紡の決意。
杉咲花のあの大きな瞳でまっすぐと見つめる眼差しの向こうに少しだけ明るい未来を感じました。