サイゴン・クチュールのレビュー・感想・評価
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未来の自分のお尻を叩く寓話的SF
ベトナムの伝統的衣装であるアオザイの老舗に跡取り娘として生まれた主人公は、そうした家に生まれた子供にありがちな反抗心もあって、アオザイを毛嫌いし、目新しい西洋風の洋服作りに入れ込んでいく。が、そのまま人生を進んでいったらどうなるのか。
母が家に伝わるとっておきの布地を使って仕立ててくれたアオザイとブローチを身につけると未来の自分の家にタイムスリップ。すったもんだの挙げ句に、自分にアオザイ縫製の技術継承を迫った母の思いを知る。
過去をやり直すのではなく、未来の自分のお尻を叩いてその時点での過去と和解して状況を立て直すのが、何だか前向きというか、いいなと思ったし、面白かった。
教訓的エンターテインメント
テンポのいいストーリー展開で楽しめました。
慢心して落ちぶれていく主人公の姿を見ていると、自業自得、悪因悪果などという言葉が浮かんできますが、やがて彼女が一念発起して奮闘する姿は胸を打ちます。
この映画が伝えたかったことは「努力することの大切さ」かな? まあ、あんなに易々とアオザイ作りの技術を身につけることはできないと思いますが……。
僕は純粋なベトナム映画を観るのは初めてかもしれないけれど、本作のレベルの高さに驚きました。
カメラワークも巧みでハリウッドに負けてないんじゃないかと思ったし、60年代のシーンは昔のフランス映画を思わせるような独特の色合いで美しかったです。
ただ、中盤の、現代のシーンは、躍動感を出そうとするあまり、カット数が多くなりすぎて、ちょっとうるさく感じる箇所がありました。
ところで、エンドロールが始まって直後の「ママ、洋装店を開いてちょうだい」というセリフはすぐには意味が理解できなかったけれど、あれは歴史に辻褄を合わせるための言葉でしょうか。
エンドロールが終わって、いちばん最後のシーンは余計ですね。ニュイが改心したおかげで、代々家業が続いているということを表したかったのですかね。
理想のクチュリエール
「アオザイ」とは、ベトナム風チャイナドレスなのか。
身体のラインがくっきりして、セクシーな衣装である。
これが正装というのだから、“たしなみ”に対する日本との感覚の違いに驚く。かの暑い国では、こういう“色気”もナチュラルなのか。
このアオザイを身体にぴったり合うように作るためには、なるほど、仕立てをしっかり勉強しなければならないだろうし、“秘伝”が必要かもしれないと納得したのである。
ファッションにおいて、当世風のアレンジによって、様式がリバイバルすることは普通のことだろう。
しかし、2017年の売れっ子のヘレンは、「1960年代“風”」のデザインすら満足に思いつかない中で、クライアントから仕事を引き受ける。
ヘレンは、あの手この手の上っ面だけのデザインで、次々と流行を作りだして商売している軽薄なモード業界の象徴として、皮肉られているのかもしれない。
一方、ニュイは、時間移動することで、“本物の”1960年代のモードを、2017年に持ち込む。
さらに、母の“秘伝書”によって、“本物の”アオザイの仕立てを身につける。
そして、「伝統のアオザイ」・「1960年代」・「2017年」の、すべて“本物”の間で化学反応を起こしてヘレンに勝利するのだ。
アオザイに、“(ネオンのような?)錯覚を起こすような幾何学柄”を入れるという斬新なデザインで。
「タイムスリップ」とはベタな話だが、そのことで“理想のクチュリエール”になれたという、面白い物語だと思う。
また、ファッションというビジュアルだけでなく、流れるレトロな感じのポピュラー音楽も、なかなか楽しかった。
ただ、固有名詞が分かりづらいのには参った。台詞がどうであれ、字幕上の呼称は工夫すべきだ。
若い「ニュイ」と48年後の「アン・カイン」は同一人物だし、「タン・ヌー」は店の名前で、名人「タン・ロアン」は母の弟子、おそらく「ヘレン」と「トアン」は姉弟でロアンの子供だ。
なお、この映画は1969年の“サイゴン”が一つの舞台であるが、ベトナム戦争の真っ只中なのに、その雰囲気さえ感じられないのは、意図的だと思うが、不思議な感じだ。
「サイゴン“陥落”」は1975年だから、ニュイが“ヨーロッパかぶれ”に振る舞っているのは、郷愁を誘う姿なのかもしれない。
厚塗りメイクとあき竹城
老舗のアオザイ屋さんの娘がアオザイを嫌い、流行の最先端のデザイナーをしてる。ミス・サイゴンでもありソコソコ綺麗なのだが、メイクが舞台化粧並みに濃くていただけないが…60年代のファッションは可愛い。母娘けんかをして、母が娘に未来にタイムスリップするアオザイをつくり、それを着て2017年にタイムスリップする。そこで将来の自分(あき竹城に似ている)がアル中になって屋敷も失いそうになってるのをみてがく然とするが、立ち直る手助けをする。
美しいアオザイとレトロなファッション、クスリと笑えるところもあり、悪くないのだが、とにかく濃いメイクに消化不良気味、ゲップがでそう。
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