「後半、急に面白くなる」映画 賭ケグルイ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
後半、急に面白くなる
「映像研には手を出すな!」のタイトルに猛烈に惹かれて観たいと思ったが、原作もテレビ版も観ていないうえにキャストも不安で迷っていた。
そこで、監督が信用できればいけるのではないかと考え、同じ英勉監督の本作を先に観ることにした。
やはり原作もテレビ版も知らないが、こちらは最悪、浜辺美波を見ているだけでも何とかなるだろうと思った。
英監督の結論から先に書くと、正直、力量は判断できなかった。
目を見張る、光ったものは感じなかったけれど、作品内のライティングは凄かったね。白黒映画の時代のような強烈さがある照明で、あの、ちょっと眩しいんですけど?と、言いたくなるほど。これは英監督の作風なんだろうか。
やはり判断できないので「映像研には手を出すな!」の前に「前田建設ファンタジー営業部」を観ようと思う。
さて本編について。出だしから中盤以降まで、設定説明とキャラクター紹介と、簡単なこれまでがあり、初見の者にはもちろん有難いのだが、そこから映画用の設定とキャラクター紹介があり、これが少々退屈で長い。
こいつはもしかして、浜辺美波のキラキラな瞳とツヤツヤな唇以外に見所のないハズレなのではと諦めかけたその時、急に面白くなっていく。
具体的にはじゃんけんの後のカードゲームが始まった時だ。
夢子が鈴井さんをパートナーに選ぶのは、ここでは明かされない、原作の中の関係性によるものかとスルーしていたが、どうやらそれだけではないようだ。
鈴井さんは素直、単純、真っ直ぐなキャラクターで、夢子にとっても、観ている者にとっても、非常に分かりやすく、つまり、夢子にとっては思考を読みやすい、操りやすい男なのだ。
思えばじゃんけんのときもそうだ。鈴井さんの思考と行動を先読みして勝利した。
そしてカードゲーム。鈴井さんの考えが夢子に筒抜けなのだと気付いたとき、私たちも鈴井さんの思考が読めるようになる。
それはもちろん、鈴井さんのたまに声に出ちゃう心の声のおかげなのだが、何を出すのかわかってしまうというのはとても面白い。
そしてそれは対戦相手にも拡がっていく。彼らがどうしたいのかを理解したとき、次に出すカードが私たちにもわかるようになる。
決勝戦で、カードを覚えられる村雨、思考を読める夢子、心の声が聞こえる私たち、この三組だけが出す前に出すカードがわかる展開はある意味斬新で、夢子と一体になるような感覚は本当に面白かった。
勝負が確定した瞬間はどこだったのか気になっちゃうよね。一回戦のときは教えてくれたけど、決勝では教えてくれなかったから。多分、白い服の女の目論見を暴いたときだと思うけど、初見じゃ見抜けない。
勝負に勝ってしまった白い服の女は負け、勝負に負けた鈴井さんは負け、勝負の場に引きずり出され、救いたかったヴィレッジの生徒に救われた村雨は負け、楽しみたかった会長は、まあ楽しめたろうから引き分け、そして、狙い通りカードゲームでは引き分けて勝負には負け、最初に言っていた望みを叶えた夢子だけが勝った。
ギャンブルをしていないとのレビューがチラホラあるが、夢子はちゃんとギャンブルをしていたよ。ヴィレッジの生徒が村雨に賭けるかどうかのギャンブルを。
村雨を読み切り、展開を読み切り、何一つ負けることなく負けて、美味しいスイーツを手にいれた。
蛇喰夢子、とても興味深いキャラクターだ。
まさかまさか、後半こんなに面白くなるとは思ってもみなかった。part2も観るよ。