「あくまで「劇場版」であって原作の延長ではない」コードギアス 復活のルルーシュ kazuttyoboyさんの映画レビュー(感想・評価)
あくまで「劇場版」であって原作の延長ではない
アニメの頃からコードギアスは大好きで、三部作も全て観終わってからこの映画を観ました。アキトなどの外伝は全く観ていません。
なんというか、一時期BLEACHやナルトで毎年のようにやっていた劇場版のような、コレジャナイ感が漂っていました。
◎KMFはCG
まず個人的に気に入らないのは、KMFがほとんどCGで描写されていることです。三部作では手書き(?)だったので原点回帰してくれたと思っていましたが、どうやらそういうことではなかったようです。
そのせいなのか、やたら凝ってごちゃごちゃしたデザインのKMFが多かったり、やたらぬるぬる動いたり、アニメ当時のシンプルイズベストな部分が無くなっている気がしました。少なくともコードギアスには、精巧で緻密な「だけ」の違和感バリバリメカは必要ないです。とくにランスロットと紅蓮の謎重装甲は、誰の趣味なんやコレ!とツッコミたくなります。ガンダムとは違うのだよ、ガンダムとは。
◎シャムナのギアス
ギアス関連でも不満点があります。シャムナのギアスは6時間の時間遡行とのことですが、私の個人的解釈を述べると、ギアスって自分の解釈では人の意識にしか介入できず、物理的な超常現象は起こせないものと思っていました。
ある意味これと似ているロロのギアスにおいても、意識上の時間を止めるだけで実際の時間は停止していないという設定がありますし、ナイトオブワンのギアスも相手の思考を読む能力と考えればスザクが勝てたことも含めて説明がつきます。Cの世界も言わば精神世界ですから、あくまで精神しか司っていないというのが物語全体に通った一本の筋だと考えていました。
これをわざわざぶっこわしてまで、変なチート能力を与える必要があったのか、疑問です。もともと予知能力だったものがルルーシュの破壊により変性したとのことですが、何でもかんでもそれのせいにしないでほしいです。これやりだしたら何でもアリのただのSFですよ、ホント。
◎キャラの扱い
あと、キャラ別にも不満があります。
①シャーリー
三部作でシャーリーは生存することになりましたが、マオ回やロロによる殺害シーンが無くなったので全体的に影薄くなったなーと思っていました。今作では自我のないルルーシュを自由に動ける一般人としてサポートする役に回っています。あーこのために生かしたのか!と判り、この後どう絡んでくるのか多少は期待しましたが、悲しいほど出番がない。一応生きてますがキャラとしては死んでますよ。
②ルルーシュ
ルルーシュはアニメ版でも三部作でも覚悟と責任をもって(視聴者側から見ると)名誉ある死を遂げましたが、その意に反して何だかよくわからない理由で復活させられ、チート能力に苦戦するとC.C.にボロカスの叱咤激励(?)を受けるなどという、もはや可哀想としか言えない酷使ぶりでした。C.C.にはある種の母性があるので叱咤激励は似合いますが、今回のはエゴに見えてしまいます。
勝利要因がよく分からないのも策略に強いルルーシュを陳腐化させていて気に入りません。C.C.にギアスは無効という設定も、前述のぶっこわしのせいで描写に矛盾が生まれていました。なぜ時間遡行には気づかないのに作戦がバレたかどうか分かるんでしょうか?
最後のナナリー救出シーンは抽象的過ぎてよくわかりませんでした。ナナリーと平和な世界で暮らすのが当初からの目的なのになんで離れるの…!(憤怒)そういうキャラの芯の部分は折っちゃいけないと思います。
③C.C.
三部作の頃から、C.C.ってこんなにデレるキャラか?と違和感を覚えていたのですが、今作ではデレッデレで少し引きました。共犯者であって恋人ではない感じの、サバサバしつつも絆はある二人の関係が気に入っていたので少し残念です。まあ可愛いといえば可愛いですので、二次創作ならここは高評価です。
④コーネリア
ルルーシュのせいでギルフォードをめちゃくちゃにされたというのに、頭を下げられれば割と容易に協力できるのがしっくり来ませんでした。まあギルフォードはフレイヤに巻き込まれた割に普通にKMFに乗るくらい回復しているのでその程度と言えばそうかもしれませんが。
⑤ジルクスタン勢
ジルクスタンはあくまで「かませ」になっていて、登場時から徹底して敵役だったので、倒されるためだけにいる感じでした。この辺りがBLEACHやナルトの劇場版っぽいんですよね。原作には一切干渉しない感じが。どうせなら、ルルーシュ復活の理由やルルーシュがC.C.と共に歩むことに決めた理由にガンガン絡めて欲しかったです。
⑥ナナリー
可愛いです。今回お目めぱちくりなので可愛さ倍増ですね。ルルーシュと一緒になれなくて泣いてるナナリーも可愛い…
◎総評
コードギアスは、政治的要素、ロボット要素、オカルト的SF要素が絶妙なバランスで噛み合った良い作品だと思っています。アニメだけで綺麗にまとまっているので、無理に伸ばす必要もないのでは。伸ばすにしても三部作の時点で(批判覚悟で)もっとシナリオをいじくりまわして、「反逆」と「復活」の繋がりをより深くすればよかったと思います。三部作に「復活」の伏線をいくつか散りばめるだけでもとても面白くなるとおもいます。
反逆のルルーシュでは、ナナリーからフレイヤのボタンを奪うシーンがとても印象的でした。ナナリーのためにギアスを使い続けてきたルルーシュがその妹にまで使うことになってしまったことや、彼女の目が見えるがためにギアスが効いてしまうという皮肉な運命にとても心が締め付けられます。今回の映画には、このシーンのような運命の歯車的要素がなかったと思います。
総評としては、ナナリーの可愛さに免じて星2つとします。←