「言葉を選ばない罵詈雑言の嵐です」ターミネーター ニュー・フェイト うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
言葉を選ばない罵詈雑言の嵐です
キャスティングはこれ以上考えられないほどに豪華。?そうだろうか?いやそうでもない。全盛期ならともかく、リンダ・ハミルトンをキャスティングすることはそれほど難しくないはず。ただし、彼女がこのシリーズに復帰するということはハードなトレーニングを自身に課すことを意味する。あの、サラ・コナーが戻ってくるということだからだ。
このシリーズを象徴する存在であるシュワルツェネッガーは、何のかんの言っても全作品に登場している。そこまで特別な存在ではなくなってしまった。ましてや、年を取ってしまったターミネーターなんて誰が見たいと思うのか。このシリーズも通算で6本目。前作でリブートに失敗し、「なかったことにする」なんて、ひどいちゃぶ台返しだ。これほどファンを裏切る行為もないんじゃないだろうか?
それもこれも、元凶はすべてジェームズ・キャメロンにある。自分ではメガホンを執らず、プロデューサーという肩書きを貸すことで出資者を募り、まだ見ぬ次回作を模索し続けている。出資詐欺、作る作る詐欺、若い才能を伸ばす詐欺で、ひどい目に遭った人たちは数知れず。とにかく、シリーズに埋もれていった輝かしい俳優たちの才能は惜しんでも戻ってこない。なかでもサム・ワーシントンは、おそらく永遠に準備中のままの『アバター次回作』に向けて準備段階の脚本読み合わせの毎日を過ごしているのだろう。契約に縛られているのか、才能の枯渇なのか、一向にほかの作品に出る気配がない。ゾーイ・サルダナが過ごしたこの10年を思えば、ずいぶん差をつけられたものだ。
だからこそ、この作品が成功を収めてしまった暁には、直近までの3作品『ターミネーター3』『ターミネーター4』『ターミネーター:新起動/ジェニシス』は、シリーズから抹消されてしまう。そんな馬鹿な!あ、『サラ・コナー・クロニクルズ』なんてテレビシリーズもあったか。これほどファンをないがしろにする行為が許されていいのか?
結論、映画の出来が良ければ、許されていい。なんとも中途半端に、面白くも悪くもない。いっそのことシュワちゃんもリンダも、ジェームズ・キャメロンもクレジットにない「前例のない」ターミネーターを作ったほうがよかったんじゃなかろうか。果たしてそれをターミネーターと呼ぶかどうかはともかく、良くできたSFアクションとしては名を残せたかもしれない。
とにかくもったいないのが、マッケンジー・デイビス演じるグレースというキャラクター。このしなやかで強い戦士は、何としてもシリーズに残してほしい。しかし、映画業界には厳しい掟がある。興行収入が振るわない以上、おそらくはこの『ターミネーター:ニュー・フェイト』すらも、「なかったこと」になってしまうのだろう。残念でならない。
2019.11.11