「T2を観ていたほうがより楽しめる」ターミネーター ニュー・フェイト 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
T2を観ていたほうがより楽しめる
ターミネーターが時空を飛び越えていきなり素っ裸で登場する衝撃的なシーンからはや35年。あれほどのインパクトのあるSF映画はその後お目にかかっていない。そしてその後のターミネーター2(T2)は、インパクトとしては第一作に及ばないものの、究極のフレキシビリティをもつ液体金属性のアンドロイドが登場する。このアイデアにも驚いた。1991年だ。
本作品は28年前のT2以来のジェームズ・キャメロンによる続編である。T2を観ていなくても楽しめるが、観ていたほうがより理解が簡単である。サラ・コナーがグレースに自分のことを説明しようとして笑みを浮かべながらベッドに座るシーンは、説明がとてつもなく長くなる可能性に苦笑いしたということだと思うが、その辺の雰囲気はT2を観ていない人には解りにくいかもしれない。シュワルツェネッガー演じるT-800の有名な台詞「I'll be back」は今回はサラ・コナーが呟き、T-800は「I won't be back」と言う。
題名には少し違和感がある。英語のままのタイトルにするなら「ダーク・フェイト」でよかったのではないか。Fateは「When you wish upon a star」(「星に願いを」)という有名な歌の歌詞に出て来たのが印象的な単語である。次のような歌詞だ。
Fate is kind
She brings to those who love
The sweet fulfillment of
Their secret longing
運命は優しい
愛し合うふたりの
密めたあこがれを
彼女は成就してくれる
運命の女神という言葉があるように、欧米では運命は女神が司るとされている。だから歌詞の中でもSheとなる。Dark Fateなら悪い意図を持った腹黒そうな女神のイメージだが、New Fateだとまだ若い女神のイメージである。
本作品は女性たちが活躍する映画で、今回初登場のダニーやグレースを想定して「ニュー・フェイト」というタイトルにした気もするが、キャメロンはどうやらさらなる続編も考えているようで、だから人類の未来に暗雲が漂っているような「ダーク・フェイト」というタイトルにしたのだと思う。
第一作とT2と本作品を観ればもうお腹いっぱいだが、数年後に「ダーク・フェイト2」が公開されれば、やっぱり観てしまうんだろうなとも思う。「ターミネーター」はSF映画史の金字塔なのだ。