「久々に観た「なぜ?の嵐」映画」サンセット regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
久々に観た「なぜ?の嵐」映画
カメラが主人公イリスの視界を憑依させる範囲からほぼ出なかったり、長回しや焦点深度のボカしの多用など、前作『サウルの息子』でも見られた監督独特の撮影手法が際立つ。
それらはすべて、舞台である20世紀初頭のオーストリア=ハンガリー帝国の混沌を表現。
あらすじも、イリスに何やら怪しげな人物が近づいては、何やら不可解な言葉を次々と投げかけていくので、観客をも混乱させる。
さんざん観客を煙に巻き続けた挙句に、最後の最後でもとことんまで「なぜ?の嵐」(by吉沢秋絵)を突き付ける。
はたしてイリスが体験した事は事実なのか?一体何が真実なのか?
「今の映画は全てを説明しようとする。私の映画は合理的に理解してほしい」という監督の言葉に象徴されるように、『山中傳奇』同様に、解釈は観客に委ねられる。
帽子店を軸としたあらすじゆえ、「帽子はおぞましい物を見ないようにするために存在する」という劇中の言葉が深い。
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