「実は弱い女性を描いた作品。だが強くある必要もない」ROMA ローマ MOTTOさんの映画レビュー(感想・評価)
実は弱い女性を描いた作品。だが強くある必要もない
アルフォンソ・キュアロンの天才ぶりが発揮されてしまった作品。
演出面では、大衆を上手く利用するあたりは黒澤明を彷彿とさせ1シーン殆ど1カット長回しだが、飽きさせない。映像の中で何かしら起きている。
そもそもキュアロンは長回しを多用する監督であるが、今作はとても効果的だった。主人公が一人で何かと戦っているシーンでは孤独感が強調され、白人家族と一緒にテレビを観るシーンは対照的に家族団欒のゆっくりな時間が滲み出ている。
映像も去ることながら、録音がとても素晴らしい。洗濯物から落ちる水滴の音、遠くで聞こえる犬の鳴き声、空を飛ぶ飛行機、タイヤで踏まれる犬のフンの音、そしてあの波の轟音… 音がとにかく気持ちよく完璧。この音が作品にのめり込む大きな要素になっていたと思う。是非良いサウンド環境で観ることをお勧めします。
Me too運動などの影響で“強い女性”を描いた作品が好まれる昨今の映画業界では、今作も“強い女性の映画”として評価されるかもしれない。しかし僕はむしろ“弱い女性”を描いた作品だったと思う。その弱い女性が周りに助けられ、そして助け、人生の一幕が過ぎていく。強くある必要はない、弱くても彼女が生きている姿はそれだけで美しい。そう僕の目には写った作品だった。
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