「ねえ、死んでるの好き」ROMA ローマ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
ねえ、死んでるの好き
日常録かと思いきや、心揺さぶるドラマ。
普遍的かつ確かな希望と愛を感じる。
鑑賞後、強い安堵感と心にじんわり染み渡り広がる水のような余韻がとても気持ち良い。
遠く離れた場所の50年近く前の物語だけど、すぐそこに在るように思える描き方。
家族と家政婦の生活がそのままポンと示され、彼らに十分に心を寄せたところで突如現れる不安要素。
穏やかな空気と不穏な出来事が繰り返されて、地味にドキドキした。
「召使いめ。」か…。キツイな。
立場や身分の差から何かゴタつくのかと思っていたけど、家族と家政婦の間にはきちんと愛があることに心底安心。
それでもソフィアから八つ当たりのようにキレられたり祖母がクレオについて何も知らなかったことに傷付いた。
知らないことに疑問すら持っていなかったのか。
仕方ないんだけども。そういうものだから。
掃除の水の波と海の波が重なる。
小さい波も大きい波も起こるし飲まれ揉まれて溺れそうになるけど、生きてる。
「たぶん大丈夫」くらいの心意気で飛行機のように飛んだり落ちたりしながら進んで生きていきたい。
みんなクレオが大好き。その通り。私も大好き。アリガトゴザイマス。
全編モノクロの映像から色を想像しながら観るのが楽しかった。
デートする時のクレオの唇は紅く染まっているかなとか、子ども部屋は色数が多いだろうなとか、パーティーに集まる人々の華やかな装いだとか。
映像におけるKの数の差についてはよく分からないけど、写真的なカットや長回しなど印象的で、その美しさはよく伝わってきた。
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