劇場公開日 2019年2月15日

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「怖い、コワイ!」女王陛下のお気に入り kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0怖い、コワイ!

2019年3月12日
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鑑賞方法:映画館

女の策略合戦。
この可笑しくも熾烈な戦いを、
3人の女優が白熱の演技合戦で魅せる!
もはや男たちは狂言回しに過ぎない。

イングランド・アイルランド・スコットランドの王位についていたアン女王(オリビア・コールマン)にまつわる史実に基づいた物語。
側近として実権を握っていたレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)は、夫マールバラ公爵がイギリス軍最高司令官であり、戦争推進派だった。
やがてアン女王は和平推進派に舵を切り、サラを宮殿から追放して、マールバラ公爵の旧友だったゴドルフィン大蔵卿を更迭し、サラの従妹アビゲイル(エマ・ストーン)を重用するようになった…などという史実がベースになっている。

作中、フランスとの戦況が時折報告されるが、宮殿はあくまで平和で戦時下の様子はない。戦地は遠い彼方なのだ。
女王と、その寵愛と宮中での地位を争う二人の側近女官の愛憎にまみれた戦いこそが、宮殿内においての戦争だったのだろう。

この3人の女優、画面への露出はほぼ同じくらいで、3人とも主演と言って良いくらいだ。
とは言え、アン女王を演じたコールマンの醜さは女優魂とでも言うか、迫真ものだった。

夫や、友人であるゴドルフィンとの関係もあって、サラは政治的な意図を持っていたが、アビゲイルは成り上がり志向だけで、政治的信条はなかったように、この映画では感じられた。

アビゲイルは、優れた才覚で男を操り、自分を信頼してくれたサラを陥れ、女王の寵愛を欲しいままとする。
このストーンの演じ振りがまた素晴らしい。
しかし、策士策に溺れる例えのとおり、女王を見損なって傲慢に浸ってしまう。
そこを見逃さなかった女王は、遂にアビゲイルに対して誰が主なのかを思い知らせる…というところで幕となる。
サラとアビゲイルの争いにあって、アン女王は操られるだけだったように見えて、実は冷静に戦況を見ていたのだ。
戦況とは、戦争のことでもあり、サラとアビゲイルの派遣争いのことでもある。
グレート・ブリテンの最初の君主だけに、バカではなかった。

いや、正に女同士の権力争いとは恐ろしいものだ。
ある意味男たちよりも執念と執着が強い。

映画は、彼女たちの振る舞いを冷徹に追っているように感じた。
時にローアングルで覗きこむ様だ。

光取り窓がわずかな廊下は、昼なお暗らく蝋燭の明かりを頼りとする。
一瞬、昼間なのか夜なのか時間の感覚が分からなくなる。
電気のない時代、そうだったのかと思う。
リアリズムとファンタジーの絶妙な融合が、この映画の成果でもあると思う。

さて、この物語の後、アン女王は数年で没する。
そしてアビゲイルも共に歴史から姿を消すことになる。
サラも、夫と共に失脚した後、貴族としては復権するものの中央に返り咲くことはなかった様だ。

冒頭で、アン女王がサラに宮殿を贈るという場面があるが、これは、サラの夫であるマールバラ公爵の戦争での功績に対してのものだった。
その宮殿が世界文化遺産のブレナム宮殿だ。

kazz
bionさんのコメント
2020年4月7日

 アン女王とベッドで朝を迎えたシーンだけ、エマ・ストーンのバストトップが見えて、アレっと思ったんです。他のシーンでは、なるべくバストを撮らないようにしていたから、びっくりしました。
 なるほど、エマ・ストーンのアイデアだったんですね。納得しました。情報ありがとうございます。

bion
bionさんのコメント
2020年4月6日

なんと、世界遺産になってるんですね。いってみたいな。

bion