「うさぎ」女王陛下のお気に入り ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
うさぎ
動物は檻の中にいると異常な行動をとるらしい。動物園の動物は共同行動と呼ばれる異常行動(同じ所をいったりきたりする、毛を引き抜くなどの自傷行為)をしていると何かの記事で読んだ。確かに子供の時に行った動物園の動物は、同じ所をいったりきたりしていた。
人間も同じ様に狭い世界の中にいると、頭がおかしくなるのかもしれない。アン王女の過食も情緒不安定も檻の中に閉じ込められた動物と同じ様なものだろう。アン王女だけではなく、王室の男達が揃いも揃って気色悪いのもそのせいな気がする。気色悪い者同士で檻の中にいるものだから自分達がズレている事に気がつかない。
はじめは物事を俯瞰して見ていたアビゲイルも、狭い世界にいるうちに日に日に神経が麻痺してきたに違いない。1回で6匹もの子を産む多産のうさぎはアン王女の分身であるのに、事もあろうかアビゲイルはアン王女の子うさぎを踏んでもて遊んでしまった。今までのアビゲイルだったら、そこまでの馬鹿な真似はしなかったはずだ。やはり、狭い世界の中だと大きく物事を見る事ができず、油断して馬鹿になってしまった気がする。自分も狭いコミュニティに居過ぎないように、気をつけよう。
こんな人達でも国を治める事ができたのだ。いや、異常だからこそできたのか?しかしこれは18世紀のイギリス王室の事だけではなくて、現代国家にも通じる事かもしれない。現代でもアメリカのトップも中国のトップも日本のトップも総じて頭がおかしい。人類は全く進歩なんかしていないし、トップは自分達の世界の中だけで自己完結する生き物だ。そもそも人間自体がご都合主義な生き物だ。ヨルゴス・ランディモス監督からは、そんな声が聞こえてくる。
あの貴族たちの間抜けなかつらもあの中にいたら間抜けだと気付かないのでしょうね。
世間知らずの世襲ボンボンが牛耳る今の日本の政治も封建時代とまるで変わりませんから、彼らはよく世間とはずれた発言をしては叩かれるのも納得です。