「「初めて同士、いっしょに頑張りましょ」」新橋探偵物語 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「初めて同士、いっしょに頑張りましょ」
上野オ-クラ劇場でのピンク映画をリエディションでレーティングダウンしたOP PICTURES+ フェス2018の作品群の一つ。
フェス中はそこそこ気になってはいたのだがタイミングが合わなかった。今回単独上映とのことで鑑賞。
鑑賞前のイメージは、『俺たちは天使だ』、『探偵物語』、『傷だらけの天使』等の日テレアウトロー路線のピンク版を想像していたのだが、やはりそこはオークラ作品、ドタバタ喜劇メインのグズグズ作品に成り下がっていた。
主人公の男の挙動不審具合は大根演技なのか、それとも演出なのかとにかくグダグダである。妄想が強すぎてリビドーが直ぐフィジカルに出てしまう特異体質を、小さい頃からの多数の映画鑑賞に起因させている件はハッキリ言って必要がない。一例を挙げたが、徹頭徹尾こういったどうでも良い説明シーンが多くて、枝葉のせいでストーリーにスマートさが感じられない。その性で肝心の悪
の組織が矮小化してしまっていてクライマックスに迫力不足が否めない。展開としても、主人公の成長物語からの、実は男尊女卑を伴う差別主義という社会問題を問う流れは組立てとして悪くはないのだが、組立てのジョイントがヘナヘナしているので強固に出来ていない。音効としての相手からの電話口からの音が加工されていないし、心の声の演出もフワフワ。なによりも素人がやったんじゃないかと訝しむ程の乱暴なカット繋ぎの編集、数え上げたらキリがない。確かにそもそもがピンク映画なのだから、濡れ場がメインであることで、それを再編集してストーリーメインにすることは、都合4日程の撮影ではどだい無理なのかもしれない。結局、事件解決後の改めての濡れ場撮影シーンも、AVのカラミの方が余程レベルが高い。笑いとエロは“混ぜるな危険”である。作品内にキチンと敷居を設けて、笑いを取るところとエロを強調するところの棲み分けをしないと、結局何を観て欲しいのかメッセージがぼやけてしまうのではないだろうか。ロールエンド後の取って付けたような続編を匂わすシーンも、キチンと続きを保障されている企画でなければ笑えないギャグでしかない。というかその次回作の内容を今作に入れ込むことは可能だった筈。“セックス探偵”とかいうネーミングのダサさも鼻につくし、本当に鑑賞していて困惑するばかりである。それは、せっかくストーリー構成、世界観、メッセージ性等のコンセプトが良かったから、それを具現化に失敗してしまっている事への苛立ちなのである。映像技術共々、映画制作の習練を努めて欲しいと願うばかりである。