「追加版であり完全版」この世界の(さらにいくつもの)片隅に Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
追加版であり完全版
前作は公開時の話題っぷりは知っていましたが観る機会が無く
今作の公開に合わせ取り急ぎアマプラで視聴しました
前作はCF実施などの公開までの経緯からは信じられないほどの
日本のアニメーション技術が結集したかのようなクオリティと
内容に心打たれましたが確かに展開的に理解しきれなかった
部分がありました
今作はそういった部分が充分補完され、白木りんのエピソードが
追加されたことですずの周辺で起こったことを
より知ることが出来たと思います
おばさんの家でスイカの皮をかじっていた浮浪児
結納の時周作が料理に口を付けなかった意味
色んな事がつながってきます
すずの抱えていた葛藤がより深まって
玉音放送の時にはじけるシーンで慟哭する姿の
悲しさもいやおうに増しています
テンポが悪くなったと言う声も聞かれますが
それは尺の都合を重視した前作で実現していた事なのだから
今作に関してそこを指摘するのはお門違いでしょう
確かに気になる部分もあります
りんが周作と花見で挨拶するシーン
そっけない挨拶でしたがそれまでの経緯からすると
そんなふうに流せるものかと観る側は思ってしまう筈
そのように周作があえて振る舞ったとも取れてしまいますが
話しを掘り下げるための追加で解釈分岐が増えてしまうのは
ちょっとと思いました
丁度スターウォーズと同時公開ですが
スターウォーズは「死を越えた精神や絆」がテーマですが
片隅は「死を越えた生そのもの」だと思います
これは戦争映画じゃなく戦時中の映画と言うだけで
降りかかる困難に自分達なりのやり方で生きていこうとする
人々の姿そのものが心を打つのだと思います
生きている意味、理由なんて
生きていなければわかるわけがありません
大東亜戦争は間違っていたと今ならしれっと言えますが
その時の日本人が青春も投げ打って国民一丸で戦った事実は
変わりません
この個人主義の時代に生きている人間にとっては尊敬しか
ありません
日本はその団結力によって大国に悪魔の兵器をも
使わせてしまう力を持った国
だからこそ戦争という行為への意見はもっと外国の受け売り
などでなく日本なりの戦争を繰り返さない発信を
もっと出来ると思います
それはこうした映画からでも十分出来ると
改めて思いました
これだ短いスパンで完全版を公開するというのも
前例が無く前作を観た人も未見の人も迷うところでは
ありますがいざ映画館へ足を運べば様々な思いで
今作を受け止めることは出来ると思います
公開劇場も少ないですが大スクリーンだとやはり
違うものがあると思いますし是非と思います