おかえり、ブルゴーニュへのレビュー・感想・評価
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ワイン造りと映画造りが同期していくような絶妙な味わい
かつて映画とワインは似ていると教えられたことがある。映画は物語の中で時を重ね、独特の渋みや重み、その背後にある仄かな隠し味や香りを帯びながら、人と人との関係性を丹念に熟成させていくもの。その工程が一つでもうまくいかないと、味わいにまとまりがなくなり、満足できるクオリティとは程遠いものとなる。
クラピッシュの待望の新作は、ワイン造りと映画造りがまさに絶妙に同期していくかのよう。丹念に手間暇かけた仕込み、そして深みのある味わいがなんとも胸を打つ。三人の兄妹を隔てた長きにわたる歳月。そして父の死をきっかけに彼らが一心同体となって進めていくワイン造り。幼い頃の記憶が随所に蘇り、このワイン一杯に様々な時間の流れが込められていることに思わず溜息がこぼれてやまない。何かそれほど劇的な展開が待ち構えているわけではないにしろ、めぐりめぐる季節の中で、人もまた成長し、じっくりと成長を遂げていく様を堪能した。
家業
世に職種は様々あれど、
「親の家業」を継ぐ者たちにとって、
その決断は、兄妹たちにとっては本当に大変なことだ。
彼らは家族の歴史と、ワイン醸りの伝統と、昨今では温暖化もあるし、
その上グローバル・マーケティングの嵐にさらされないといけないからなぁ・・
僕の家も“家業"を持つ一族のメンバーだったから、そのような視点からこの映画を味わうのも乙だ。
大人になった三兄妹が、
それこそ文字どおり「酸いも甘いも噛み分け」てきて、いま再び三人で並んでちょこんと座っている。
畑を見渡しながら、実家のテラスに座っている。子ども時代に戻って一緒にテイスティングしている。
両親からのハグと、ブドウ畑からのハグが、思い出の光と風に乗って三人兄妹を包む・・。
とてもいいシーンだった。
あの瞬間に、子どもたちはたくさんのものをグラスの中に味わっている。そうなのだ。あの子どもたちはブルゴーニュの土地っ子=農産物なのだ。
家業をついだり、
一旦は家業を継いだがそこから離れた経験のある者にとっては、また別の意味での味わいも深い、
そんなワインの物語だったと思う。
元ワイン醸造所勤め
きりんのレビュー 🍇🍷🌿
追記
勤め先の醸造所の除梗機は巨大なフランス製で、
1次発酵タンクはステンレスのドイツ製でしたね。毎日10トンのブドウを潰しました。
秋になれば、吹いてくる夜風は むせ返るほどのブドウの香り。ここは長野県塩尻市。
ブルゴーニュの美しい景色を堪能
ブルゴーニュの美しいワイン畑の景色を堪能できる一本。
オーストラリアに恋人と子供を残してきたジャンがどんな決断をするのか最後までわからない。
弟は無事に義父から独り立ちできるだろうか。
何だかんだ仲良しな兄弟でほっこりした。
1年間という時の流れの中で3人の兄妹弟を軸に親子、夫婦、ワイナリー...
1年間という時の流れの中で3人の兄妹弟を軸に親子、夫婦、ワイナリーの人間模様が美しいブルゴーニュの風景とワイン作りを軸にサラッとした肌触りながら奥深く描かれている。フランス語が心地良く響く映画だった。
ワイン造り
父親の病気を期に再会した兄妹のワイン造りとブドウ畑の遺産相続、それぞれ3人の抱える問題が描かれます。
全編を通じて、起伏がほぼないストーリーですが、馴染みのないワイン造りのやり方にこうやってワインが作られているのかと勉強になりました。
映画全体としてもうまくまとめられており、味わいのある仕上がりかと思います。
ドメーヌ一家
フランスは、ブルュゴーニュは、ワインで有名なんだね。家出した長男が、父親の危篤で帰郷。
家業を継いだ妹と、婿養子に出た弟と再会!
みなそれぞれ事情と今の課題を持って生きている。
家族は、わかっているつもりが
何にもわかっていない!
しかし
絆は強い!
家族と家業を考えさせられる
いい作品だ!
タイトルなし
子供の頃
毎朝窓の外を見て思った
"毎朝、違う"と。
窓から同じ景色を見て
季節の感じる
成長を感じる
.
フランス・ブルゴーニュ地方
この地で葡萄を育てワインを作る
ドメーヌ家
長女ジュリエット・次男ジェレミー
家を出た長男ジャンが10年ぶりに戻ってきた
父がなくなり相続問題や
それぞれの家庭など課題が山積み
だけど
ワインの熟成と同じように
家族も時間をかけて熟成されていく
.
親の愛を感じられます
家族の良さを感じられます
🍇美しい風景
ワイン🍷飲みたくなります😘
.
【人生とワインは似ている。良いものにするには、時間と発酵が必要なのだ。】
伝統的なブルゴーニュワイン製法に拘る一家の物語。
父親に小さい頃から長男として厳しく育てられてきたジャンは10年以上前に、故郷を離れ今ではオーストラリアでワイン農家になっている。
次男のジェレミーは近隣の裕福なワイン農家の娘と結婚して、マスオさん状態。
父が亡くなり、家業は長女(だが、末っ子)のジュリエットが継ぐが遺産問題のため、ジャンが10数年ぶりに帰国する所から物語は始まる。
序盤は、葡萄の収穫風景と美しいブルゴーニュの丘陵の緑に覆われた風景に魅入られる。
だが、ジュリエットは葡萄を収穫するために雇った大勢の人々を上手く統制することが出来ない。
ジャンはオーストラリアに残してきた妻、アリシアとの関係が上手く行っていないようだ。
ジェレミーも義理の両親との関係に馴染めずにいる、という状況が葡萄収穫の風景と共に描き出される。
それにしても、ブルゴーニュワインを作るのは実に手間がかかる事をこの作品から学んだ。(知識として、知っていた積りだが・・)
特に彼らのワイナリーはビオディアミ農法で葡萄を育てているから、更に手がかかる。が、それに拘ってきたのは、彼らの父である。
夫々の悩みを、兄妹3人でお互いを思い遣りながら、乗り越えていく姿が素敵だ。
特に、兄夫婦の状況を心配してアリシアに兄に内緒で電話するジュリエットの姿や、高圧的な義理の父への不満を爆発させるジェレミーの姿など。
そして、オーストラリアから息子ベンを連れて、アリシアがやって来る。気を遣う、ジュリエットとジェレミー。時間をかけて、ジョンとアリシアの関係性が好転していく様も、自然に描かれている。
ジュリエットも2年目の収穫時には、見事に作業者たちとコミュニケーションを取り、指示を出す。
相続税を払うために彼らが、”特に、長男ジャンが”、下した決断には尊崇の念を禁じ得ない。
ジャンが亡き父の自分への想いを確認することが出来、決断を下すプロセスが亡き父の姿を効果的に挿入しながら、説得力ある形で見ている側に伝えられる。
又、ワインをつくる風景(葡萄摘み、労働者たちの疲れを癒すための酒宴、足で葡萄を潰す作業など)は優れたドキュメンタリーを観ているようである。
<代々、丁寧にワインを作ってきた”ドメーヌ”の血は、そんなに簡単には消し去れないのだ、ということを美しいブルゴーニュの四季の風景を背景に描き出した逸品。>
<2019年11月18日 劇場にて鑑賞>
ワインと家族愛、か。
一言「そういうアプローチも、いいんじゃない?」。
◎よかった点◎
・妻と揉めている兄・義両親にうんざりしている弟・父と一緒にワインを作る妹。
みんな十分大人になって、いろんな問題を抱えながら実家に集まる様。
場所も心も離れていた兄と、弟&妹の心の葛藤がビターテイスト。
・父が亡くなり、残ったワイン畑と相続税問題。
ただワインを作り続けていればいい問題じゃない。
ワインを売っても土地代の1%にしかならないって、シビヤだ。
・「そうするの一体」と言いながらも、ワイン畑の作業を通じて。
自分たちの子供の頃の場面挿入もちょっとだけあって。
少しずつ昔のような、兄妹の心のふれあい・家族と向き合うことを自覚していく様がいい。
・ワイン醸造家族の作品って、いくつか観てますが。
製造方法の場面もあったりして、見所はありました(ワイン飲めないけど)。
△いまいちな点△
・前半がちょっとだらっと暗い印象。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「世界を見てこい、旅へ出ろ。でもいつかは帰ってきてほしい。
お前を愛してる」by父。
大切なものを新ためて見つける話
とにかく、ぶどう畑の景色が美しい〜〜。
どこまで続くぶどう畑。
角度にもよるのだろうけど、
その風景にそぐわない無粋な建物が写ってない。
羨ましいなあ〜〜
伝統を守るのか、経営の危機を回避するのか
どこの世界も後継者とお金の問題は悩ましいね〜〜。
で、月に8回程映画館に通う中途半端な映画好きとしては
兄弟が主題の映画って、
すぐに骨肉の争いみたいなことを思ってしまうけど
この映画はそこではなく、
兄弟それぞれが自分の大切なものを改めて見つける話。
これといって親から受け継ぐものを持たない自分的には
ぶどう畑と醸造所があるだけ羨ましな〜〜みたいな〜〜
@もう一度観るなら?
「悪い映画では無いけど、あまりピンとこなかった〜
ワインは美味しそう〜」
人生もワイン造りのようにじっくりと
良かったなぁ〜
じわじわ良い映画だった〜
フランスのブルゴーニュ地方でワイナリーを経営する一家の一年を描く
ワイン造りは一年がかりで、そこから更に時間をかけて熟成させていく
その過程で、時には失敗してしまうこともあるし、逆に勘が当たって成功することもある
そうやって、失敗と経験を繰り返して
そのワイナリーの個性を持ったワインを造り出していく
この映画は、そのワインを熟成させていく過程と、そのワインを造る兄弟の人生を重ね合わせて描いている
初めは妹弟から疎まれていた兄
しかし、その気まずい関係も、ワイン造りを通して徐々に修復していく
ブドウ畑は、毎日変わらない景色のようでいて、
でも実際には、毎日少しずつ微妙に成長して、毎年実をつけるように
人生も、毎日変わらない日々を送っているようで、しかし、実際には、全く同じ日は一日もない
そして、ブドウはワインとなって、樽の中で熟成していくように、人生も日々を過ごしながら熟成させていく
そうして、子供の頃から何も変わっていないようでいて、いつの間にか大人になっていることに気付き
それぞれが「本当に望む人生」を確立させていく
やがてそれが、その人にしかない個性になる
きっと誰にも「何かを決断しなければいけない時」がやってくる
例えば、結婚とか、出産とか、転職とか
主人公兄弟にも、その時がやってくるのだけど
彼らを観ていると、一生を左右するような決断にはじっくりと時間をかけるべきだと思えてくるし、そこが、この映画の良いところだなと思った
長い人生を思えば、半年とか、1年とかっていう期間は、そう長い期間でもない
そこからの長い人生を思えば、それぐらいの時間をかけて、その後の進路を考えても良いと思った
そして、ブルゴーニュの美しい景色
どこまでも続く広大なブドウ畑を観ていると、それだけで、些細なことがどうでもよく思えてくる
毎日、5分とか、10分単位で時間に追われた生活をしていると
ついつい後回しにしてしまうことがある
特に、家族との時間がその良い例だろう
でも、後になって「あぁしておけば良かった」という後悔をしないためにも、家族との時間を大切にすべきだと思った
じんわり、じっくり良い映画なので
是非、観て欲しい作品
清々しい決断
現在、フランス語圏の監督で間違いのない作品を出しているのがセドリック・クラピッシュだ。
「スパニッシュ・アパートメント」のシリーズでは、グローバル化する世界を生きる若者を描いてきた。新しい世紀に入って20年が経とうとしている現在、世界は内向きな発想が支配的になってきており、あの連作で描いてきたグローバル化の状況が今となっては懐かしさすら感じれるほどに、過去のものとなりつつある。
そんなタイミングで撮られた彼の新作は、フランスの伝統産業であるワイン醸造を家業とする兄妹たちの物語だった。
一家のワイン造りが父の死によって存続の危機を迎えるが、兄妹たちの奮闘と理解によって再スタートを切る。そのさわやかな結末は、これまでの作品と同様、クラピッシュ映画お得意のラストシーンである。
ワインを作るということは、ブドウを育てることから始まる。他の多くの酒は、醸造所や蒸留所で使用する原料が別の土地から運ばれてくる。そこが、ワインと他の酒との決定的に異なる部分であり、ワインという果汁をアルコール発酵させた飲み物の味わいの多様性の元となっている。
極めて土着性の強い産品なので、そこに携わる人間が変われば、それだけで出来上がったものの味わいも変化する。そして、いったんそのブドウ畑や醸造所を解体してしまえば、復元することは不可能なのだ。
これまで、父親が守ってきたことの値打ちは、弁護士や不動産屋との会話で交わされる金額などでは、とても贖えないものであることを、長らくこの家を出奔していた長兄と共に観客は学ぶこととなる。
世界中を巡って、今ではオーストラリアの広大なブドウ畑でワインを作っている長兄が、フランスへ帰ることを決めた理由には個人的な事情もある。
しかし彼は、長らく守られ続けてきた大きな価値が、この地上から霧散してしまうことを止められるのは自分しかいないことに気付く。彼の決断が清々しく感じられるのは、その個人的な利益を超えたところに理由があるからに他ならない。
ワイン批評家にも大好評のこの映画
厳格な父とその期待過剰な長男との長年の確執と隔離、亡き失って始めてわかる息子の悔恨、こういう題材には痛いほどシンクロし、心に染みる。ワイン批評家にも大好評のこの映画は自分のような講釈愛好家ではないものもワイン造りの奥深さに魅入る。誰にでもある日常の闇にどこか共感し、惹きこまれる映画。
「除梗率50%」派手ではないが、いい雰囲気の丁寧な良作
外国暮らしで長年不在だった長男、味覚に優れた独り身の長女、妻の実家に婿入り? した少し年の離れた次男
父が亡くなりドメーヌのワイン造りを担う代となった三兄妹。しかし在庫のワインを売っても払いきれない相続税を課せられどうするかというテーマを中心に、それぞれの家族模様を交えて描かれます
フランス映画というと人物たちがやたらと激しく罵り合うように口論してケンカ別れして話の緊迫感を高めるようなイメージ(偏見?)が自分にはありますが、そういうありがちな、少なくとも後味の悪い展開はこの映画にはないです
そしてもちろん自分たちで初めて担うワイン造りがもう一つの話の中心です
フランスには行ったこともありませんが、ブルゴーニュってこんなところなのか、ぶどう畑ってこんなふうなんだ、収穫祭はこんな感じなのか、冬はこんなふうにぶどうの木の手入れをするのか、とか一年間の雰囲気を味わえるのがいいです
——以外、ワイン造り関係で軽いネタバレあります
まずは味に大きな影響を与えるぶどうの収穫日の決定(糖度と酸味の兼ね合い、雨など)、収穫で弾くぶどう。除梗率(房についてる小さな枝をどのくらい取り除くか、ということだそうです)。もっと後では澱引きの有無、瓶詰めのタイミングなどなど
三兄弟が幼い頃、父にワインの味わいかたの手ほどきを受ける回想シーンなどを交えて、ワイン造りの一つ一つを、父ならばどうしただろうかと思いを馳せ迷いながら決めていく
父と祖父の作ったワインの味わいから偲ばれるそれぞれの人間性。そして新たな担い手となった長女も、できたワインの試飲で、兄妹と杜氏さん?に、彼女らしい味だと評してもらえるのがいいシーンです
—— 以上、軽いネタバレ
多少の話の展開はありますが、しかしプロットとしてはそれほどダイナミックに進むわけではありません。そういう意味では少し物足りない感じもありますが
しかしプロット優先ではなく、ただ人や景色を、細かい枝葉を少し残しながらいろいろな姿を丁寧に描きたかったのかなとも思います
この監督さん、昔、「猫が行方不明」という映画を公開時に観てとても気に入った覚えがあります。街中で行方不明になった猫を少し気弱な青年が探すなかでのいろんな人とのやりとりを描いた話だったと思いますが、本作よりももっと軽いユーモアが多い描き方だったと思います
本作でも声出して笑ってしまう場面が何回かありますが、ああいうのがもう少しあっても良かったかな。猫が行方不明も見直したくなりました
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