「不条理な恐怖と究極の緊張感」ダウンレンジ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
不条理な恐怖と究極の緊張感
楽しすぎて心臓止まるかと思った。
開始5秒で急展開、一切無駄の無い90分の究極の緊張を楽しめる完全ワンシチュエーションのサバイバルスリラー。
隙の無い狙撃と銃声が身体に重く響いて、一寸先も見えない死の恐怖をダイレクトに感じた。
スナイパーの殺戮に何の目的も理由も意味も示されないところが良い。これ以上ない不条理さが好き。
結構なガチ装備で潜んでいるのでその本気さが垣間見えてゾワゾワする。
飢え乾くターゲットを片目に、これ見よがしに水を飲み干し肉をかじるシーン好き。
劇中の若者6人のタイプがウェイウェイのパリピ系じゃないのも良い。
露出度の高いセクシー美女とイケメン達のイチャコラズンドコ旅ではなく、相乗りで出会ったばかりのお互いをよく知らない少しぎこちない関係というのが新鮮。
相乗りの背景や目的地に向かう理由はジョディ以外明確な説明がなく、上映が始まって初めて6人に出会った観客側の目線と重なるものを感じる。
6人ともわりと普通な人間なので親近感がわき応援したくなる。だからこそ絶望感も強く感じられる。
ジョディの妹に向けたハッピーバースデーの歌のシーンは泣けた。サラとトッドの秘密も。
取ってつけたような小さなドラマだけど、この窮地では倍グッと来た。切ない…
ゴア描写のサービスショットも惜しみなく、見た目にも楽しい。
ジェフの頭の中からズームアウトしていくカットやサラの顔から滴る血液とボロボロになった目玉など、造形も見せ方の演出も骨太で凝っていて最高。
車に踏まれたり首飛んだり、ジェフの扱いよ…かわいそうに。
ついさっきまで談笑していた人間が唐突に破壊されて動かなくなってしまう戸惑いと恐怖が好き。
とにかく楽しくて一発で大好きになった作品。もう一度観たい。
2018.9.28 もう一度観た 追記
分かっているのに恐ろしい。
そしてこの作品を好きな気持ちが更に高まり、胸と頭がいっぱいになって呼吸が荒くなった。
序盤に道端でサラが見つけたモチーフは何だったんだろう。十字架や花があったからそこで死んだ者達への手向けなのかな。
そうするとあのスナイパーは以前からあの場所を狩場にしていたことになる。末恐ろしい。よく捕まらなかったな。
軍人の親を持ち、家族で狩りをしていたケレンが今回狩られる立場になった心情を考えるとたまらない。
頭が切れてかっこいい彼女が好きだったので、あっけない最後はショックだった。
エリックみたいに脚とか撃たれて苦しんだりしてから段階を踏んで殺されて欲しかった気持ちもあるけど、スナイパーからしたら警察迫ってるし時間ないから仕方ないか。好きだ…
全滅のあの後どうなるのか、あの前はどうだったのかなど説明の無いもどかしさもまた好き。
ぎゅっと詰まった濃厚な本編に対してぽっかり空いた余白を自分なりに想像して埋めるのも楽しい。
劇場のスクリーンと音響で観るのが楽しい作品だったので公開終了してしまったのが悲しい。
もっと大きなシアターでまた観たい。
2018.12.29 一番怖いの人間ナイトにてまた観られた。追記
パンクした時の写真をサラがSNSにシェアした時、メッセージを送ってきた人が彼女と同じ名字だということに気づいた。
弟だったのか、兄だったのか。
色々あったサラを気遣う家族の存在がまた悲しい。
エリックの死に様は他の人たちとは少し違うのが面白い。
敢えてすぐには殺さず、脚を撃ち水を持つ手を撃ち希望を絶ってジワジワ追い詰めるスナイパー。
狼(野犬)がやってきた時、エリックは絶望のあまり死に落ちたのかなと思う。今までの失血と衰弱も相まって。
まさに命を弄ぶスナイパーの恐ろしいこと恐ろしいこと。
唐突な始まりも勇気を出した行動も希望の爆発も全部効果的、全部好き。
もうなんかこの映画の中に入りたいと思った。(ただし絶対死にたくない)