「リアル。」マチネの終わりに daoriさんの映画レビュー(感想・評価)
リアル。
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わたしが原作の本を読んだ時に印象的だったシーンは、登場人物が相手に惹かれる愛の場面でした。
蒔野が洋子の所作1つ1つを目で追いながら愛してゆくシーン、洋子からリチャードへの姉のような愛情や、三谷の蒔野への熱っぽいひたむきさ、親が子を想う温かさ。
しかし、映画を観たあとから何度も思い出されるのは悲しみや後悔を抱えながらも、どんなに堪えても相手への気持ちが体の中から溢れ出てしまう…行き場のない愛を見せつけられるような切ないシーンばかりでした。
嘘をつき、強がり、さまよい、震え、叫び、怒りながら微笑み、崩れ落ちるように泣く。それが、とてもリアルだと感じました。
美しい風景や演出も欠かせないものでしたが、福山さんが骨の形がわかるほどに顔を歪ませ、石田ゆり子さんが目尻に深くしわを刻み顔をくしゃくしゃにして涙する場面が、わたしにとっては紛れもなく蒔野と洋子そのものであり人の生き様を細密に表現した、この映画の本質であると思いました。
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