「ロシア版大脱走映画だが、爽快感は無く、ナチス将校一人一人の念入りな仕置が印象に残った」ヒトラーと戦った22日間 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
ロシア版大脱走映画だが、爽快感は無く、ナチス将校一人一人の念入りな仕置が印象に残った
コンスタンチン・ハベンスキー 監督・脚本・主演による2018年製作(118分)のロシア・ドイツ・リトアニア・ポーランド合作映画。原題:Sobibor、配給:ファインフィルムズ。
舞台となるソビボル強制収容所はナチス・ドイツがポーランド東部ソビボル村においた強制収容所でユダヤ人絶滅を目的とした三大絶滅収容所の一つ(約20万人から30万人の人々がここで殺害されたらしい)。ここに収容されたソ連軍人アレクサンドル・ペチェルスキー(ハベンスキー)が主人公。
冒頭、列車から大勢のユダヤ人が降りてくる。その中で一際目立つ美人が宝石技師の妻ハンナ(ミハリナ・オルシャンスカ: 主演作も多いポーランドの女優、歌手、作家)。彼女がこの映画のヒロインかと思ったのだが、消毒と言われ裸となった大勢の女性たちと一緒に、ガス室の中であっさりと死んでしまう。エー!という意外性が大で、ナチスの残酷性が強く印象つけられた。とても勿体無い女優の使い方という気もしたが、上手い演出でもあった。
馬の様に将校乗せた台車を走らせられる等、ナチス将校たちのユダヤ人(宝石や皮製品への特殊技能や強制労働のため生き残された)への扱いの酷さが、強調されていた。これが、後の方のナチス将校一人一人を誘き寄せての始末に繋がる。たっぷりと時間をかけてねっとりとした殺しが描かれており、ロシア版の必殺仕置人の様であった。
主人公と相思相愛の女性ルカ(フェリス・ヤンケリ)が、特別な技能がある様にも見えず、ナチス将校の愛人でも無いようで、収容所内を自由に行動できている理由が分からず仕舞いで、その点では脚本に納得ができなかった。
最後、大脱走後の歴史的な事実が語られる。現実には、多くが生き残れなかった様で、この脱走劇が史実であったことを改めて思い出させられる。
監督コンスタンチン・ハベンスキー、製作エルミラ・アイヌローバ グレブ・フィティソフ マリヤ・ズロムスカヤ、製作総指揮マリヤ・ミカイローバ、原作イリヤ・ワシリエフ、脚本
コンスタンチン・ハベンスキー、 アレクサンドル・アダバシヤーン、 アンナ・チェルナコワ、 アンドレイ・ナザロフ、撮影ラムナス・グレイチウス、編集ユーリー・トロヤンキン、音楽クズマ・ボドローブ。
出演
コンスタンチン・ハベンスキーアレクサンドル・ペチェルスキー、クリストファー・ランバートフレンツェル、フェリス・ヤンケリルカ、ダイニュス・カズラウスカスレオ、マリア・コジェーブニコワセルマ、セルゲイ・ゴージンアルカジイ・バイスパピル、ロマーン・アゲエフボリス・ツィブリスキー、ゲラ・メスヒセミョン・ローゼンフェルド、ミハリナ・オルシャンスカハンナ、イワン・ズロビンシュロモ、ファビアン・コチェンツキハイム、ウォルフガング・キャニーグスタフ・ワーグナー、カツペル・オルシェフスキトマス。