劇場公開日 2019年6月28日

「今世紀の日本映画を代表する名作では……。」凪待ち お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0今世紀の日本映画を代表する名作では……。

2020年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ギャンブル中毒で、世間的にはどうしようもない男だけど、おそらくは生まれて初めて掴んだ「人を愛する気持ちと責任」とを大切に抱えている男・郁男を、香取慎吾が演じており、これが鳥肌が立つほどの名演技でした。

次々と耐えがたい不幸や不運が主人公に降りかかるけれど(そしていくつかは自業自得としか言いようのない不運ではあるのだけど)、大津波で人々が理不尽すぎる傷を負ったまま生きている被災地が舞台であるからこそ、主人公の不幸すら、相対化されて吸収されて行くのです。

弱い部分を山ほど持っているのが人間。
否定するわけでもなく肯定するわけでもなく、等身大で正面から描くお話で、まったく予想もつかない展開が広がるシナリオの素晴しさ老練さにも舌を巻くばかりでした。

エンディング近く、死んでしまった人との気持ちが時間を超えてつながって行くシーン。
そう来たか……と、思わず うならされます。

白石監督作品としては暴力シーンは控えめなので、そういうシーンが苦手な人でも許容範囲だと思いますし、確実に海外の有名映画賞を総なめにするであろう映画ですから、ぜひとも観ておくことをお勧めしたいと思います。

お水汲み当番