「手紙をキーアイテムにした、どこまでもどこまでも直向きで純粋な愛の物語」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
手紙をキーアイテムにした、どこまでもどこまでも直向きで純粋な愛の物語
公開当時、見逃してしまった作品だが、漸く、TV放映で鑑賞した。作品世界がしっかり構築されているので、自然に作品世界に吸い込まれた。惹き込まれた。本作は、古典的なストーリーではあるが、どこまでも、どこまでも直向きで純粋な愛の物語である。美意識の非常に高いアニメ映像が、物語をしっかりと支えている。心に強く染み渡る感動的な作品である。
血で血を洗う、人々の心に深い傷跡を残した戦争が終わってから数年後、人々は、平穏を取り戻し、前に進み始めていた。戦争で両腕を失った主人公ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン(石川由衣)も、想い人・ギルベルト少佐(浪川大輔)が生きていることを信じて、手紙の代筆業(自動手記人形)をして生きていた。ある日、主人公の働く郵便社に宛先不明の手紙が届く・・・。
愛を知らない主人公は、様々な事情を抱えた人達の代筆をすることで、人を想うことの意味、大切さを知り、少佐への想いを深めていく。同時に、意志を伝える手段として手紙の持つ力に気付いていく。
会話は相手の態度、表情で相手の心情が読み取れるので、人は相手に寄り添った会話ができる。しかし、手紙は相手が見えないので、自分の気持ちと向き合って書く。素直な自分の気持ちが強く出る。
余命僅かな少年が、両親、弟、友への手紙の代筆を主人公に依頼した時、自分の想いを濁す少年を主人公が諭す“自分の想いを素直に綴らなければ相手には伝わらない”という台詞が、終盤への布石になっている。主人公自身を鼓舞する台詞になっている。
終盤。少佐の生存が分かり、主人公は会いに行くが、少佐は戦争への贖罪の想いから主人公との再会を拒む。ラストシーン。最後に二人がそれぞれの想いを綴った手紙が、二人の想い、本作全体を凝縮している。観客の心に突き刺さる。二人を奇跡の再会に導いていく。
本作は、手紙がキーアイテムになっている。
大切な人に手紙を書きたくなった。自分の想いを素直にストレートに伝えたくなった。