「赦しがたい暴力に直面しなお「言葉を伝える」こと」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン Gifuさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0赦しがたい暴力に直面しなお「言葉を伝える」こと

2020年11月23日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

分断が進む世界で、隣人と気軽に会話ができないような社会になってしまった国もあります。そんな中、「言葉」によってわかりあえない人と人とがわかりあえるようになっていく。純粋にそんなお話でした。
まずは、すべての製作者、携わった方に感謝したい。創作にこんなに感動したのはいつぶりでしょうか。沸き上がる感動、心を強烈に揺さぶられました。
フルメタルパニックから氷菓の頃まで京アニ作品は欠かさず見ていましたが最近はアニメも見なくなりました。ヴァイオレット・エヴァーガーデンも名前は知っていたが未見でした。しかしこの映画の評判がとても良いことを聞き、テレビシリーズ、特別編、劇場前作を全て見た上でドルビー・デジタル対応の映画館で観賞いたしました。
素晴らしかったです。大前提として絶対にテレビシリーズを全て見てから本作は見た方が良いです。NETFLIXで全部見られます。
作画は言わずもがな、話も脚本の妙、140分の長丁場を感じさせず素晴らしいです。あらゆる伏線を回収していく脚本にはびっくりしました。声優さんも。特に子安さんのとあるシーンの演技は作画と相まってすごかった。
結末には皆さん色んな意見があると思いますが、ヴァイオレットの一生涯を描ききるとすればこの終わり方しかなかったと思います。また、現実世界でのあの事件を思い出すと、作中語られる「生きているかぎり忘れられない」というセリフが重すぎるほど重く、テレビシリーズで少佐への思いを振り切っていたかのように見えた部分を今一度取り上げることに強く共感しました。
あの事件のあとに作られた本作。いちファンとしても乗り越えることなど到底できないですが、見終わったあとの溢れる感動と一抹の清涼感、そして寂寥感は間違いなく傑作の証です。
忘れられない作品になりました。これからも何度も見返すと思います。そして、赦しがたい暴力に直面しなお「言葉を伝えること」を訴えるメッセージには本当に心を打たれました。こうしたメッセージを持つ傑作が、世界が大変な時期に公開されたということを私は偶然だとは思いません。私たちも先に進まなければなりませんね。京アニのこれからが一層楽しみです。

Gifu