「タランティーノ特有のウイット」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド wutangさんの映画レビュー(感想・評価)
タランティーノ特有のウイット
(ちょっとネタバレをはっきり書きますのでご注意ください。)
終始ニヤニヤさせられた。
ディカプリオのファニーな役柄にもニヤニヤしたし、ブラピのかっこよさ、古き良き時代の描き方、随所の台詞回しのオシャレさ、ずっとニヤニヤさせられていた。
この空気の中、あの事件を描くのかと。
どんな展開になるのか、特にシャロンテートが出てくる度に緊張感が高まり、一体あの凄惨な事件にブラピとディカプリオがどんな絡み方をするのか。
彼らが出ている以上、一定以上はフィクションになるわけだが、それがどういうかたちに落ちるのか。興味深くスリリングに見ていたが、ラストでなんと決定的に笑かしてくれた。
ラストシーンは圧巻だった。
2時間もかけて、事件を知る者をハラハラさせた挙句、その緊張感がピークに達したところでタランティーノが笑いながら尻出して逃げていったようなオチだった。
曲がりなりにも人が襲われたり死んだりするシーンである。
私は痛い系、特に女性に対する暴力シーンなどが大の苦手なので、まさか自分が
女性が執拗に顔面を叩きつけられたり火炎放射器で燃やされるという悪趣味なシーンで声を出して笑う日が来るとは思わなかった。よくあの仕上がりに調理したものだと感心した。
プールでディカプリオが「WTF」を叫んだシーンは思い出し笑いの域まで来ている。悲惨なシーンのはずなのだが。
また、犬に合図するところを筆頭に、ブラッドピットの信じられないカッコ良さもこのシーンに強烈な色を塗っている。
これだけ予想外の事だけが連続するとんでもないシーンを描いて、主人公の友情を描いてラストっぽくしたかと思いきや、最後3分程度でとんでもない生ぬるさで締めくくる。
タランティーノの美学が本質的にユーモアに支えられていると実感できる名作だと思う。