「好奇心と、正義感~タランティーノを形作るもの~」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド Jolandaさんの映画レビュー(感想・評価)
好奇心と、正義感~タランティーノを形作るもの~
全部の作品を観た訳じゃないんだけど、タランティーノは好きだし(キル・ビルとか)、前評判もそんなに悪くなかった気がするので、失望させられる可能性は低いだろうと、期待はしてました。
結果・・・とっても、よかった。ラストがやっぱり(タラちゃんだけあって)すっごく怖いんじゃねぇかと内心ビビりまくっていたんだけど、「いやいや(女の子)叫びすぎや」とか「いや火炎放射器なんで持っとんのや」とか、内心ツッコミを入れながら、時には笑っちゃう余裕すらあった。
前評判通り、60年代ハリウッドとアメリカの空気感が全編を通して画面から匂い立つようだし、ディカプ&ブラピの演技も最高。ディカプ演じる落ち目の俳優の哀愁が「パない」。腕っぷし自慢のブラピの筋骨隆々ぶりと、ラスト付近の「キマッてる」シーンが特に最高(脚本がいいってのもあるんだけど)。
ただ――指摘し尽されたと思うけど――あの(高名な)ブルース・リーがあんないけ好かない奴で、なおかつ、一介のスタントマンとのタイマン勝負でフルボッコされるなんて展開、あっていいんでしょうか・・・。
ま、何はともあれ、思うんです。タラちゃんの映画作りのモチベーションについて。タラちゃんって、好奇心の強い人なんじゃないかって。なぜ、殺されなければならなかったのか。なぜ、殺したのか。あの時、もし、隣に腕っぷしの強い、ラリった男が居てくれていたら・・・?
これはタラちゃんなりの鎮魂歌で、ある意味、マカロニウェスタンなのかも(マカロニウェスタンをよく知らないので、全然違うかもだけど)。作中、ビビりながらもヒッピーに蹴りを喰らわすイタリア人妻のたくましさは、そのまま、タラちゃんを立派に育てたお母さんのたくましさなのかも(キルビルも、元マタニティーママの「一大壮絶復讐劇」だし)。
あったかもしれない、もう一つの幸せな現実。ラストは少し、ウルッとさえきました。「夢見がち」って、悪いことじゃない。好奇心も、正義感も。やや冗長で残酷で、でも、人柄がしのばれる。そして、洒落のきいた小粋な脚本。私にとっての、タランティーノ。