劇場公開日 2019年8月30日

  • 予告編を見る

「初投稿」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド とーりさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5初投稿

2020年1月15日
Androidアプリから投稿

どのカットにも彼なりの愛が溢れていて、もっとリック・ダルトン&クリフ・ブースとの時を過ごしたくなる ーーー 『パルプ・フィクション』『ジャッキー・ブラウン』のような晴れやかな西海岸の一見ダラッとした空気感で、『イングリロリアス・バスターズ』のように複数の愛すべきキャラクター達による物語を並走させ、『デスプルーフ』のようにスタントマンに敬意を払い、『ジャンゴ』『ヘイトフル・エイト』のように(マカロニ)ウェスタンへの愛を綴る、が異なる点として今回は映画より(アメリカの)《テレビ》。シネフィルかつ映画上歴史改変者=タランティーノが描くシャロン・テートとマンソン・ファミリーそしてTVスターとスタントマンの二人三脚公私に渡る関係、あらゆる夢が崩れ去り、イノセントさが失われた60年代末へのラブレターのような一本。一つ言えることはタランティーノはきっとヒッピーが嫌いで、テレビが好きだということだ。圧巻のセットで再現された当時の街並み風景の中、基本的にはなんてことのない日常を切り取ったユルいコメディのようでありながら、ふとした時にノスタルジックな気分(リック&シャロン)になったり、ひやりとサスペンス(クリフ&マンソンファミリー)に掛けられるのは流石。シャロン・テートのパートが本当に無害であの頃のイノセンスの象徴のようであるのに対し、始終べらぼうに面白くて独壇場かってくらい素晴らしい演技を見せてくれるのはやっぱりディカプリオ&ブラピの今日考えうる最高の黄金コンビ。特に、シャロン・テートに関しては夫ポランスキーが10年後に映画化することになる『テス』の初版本を買うシーンはなんてことのないシーンなのにホロリ。そして無論作品はあの痛ましい事件つまりタランティーノお得意壮絶暴力描写へのカウントダウンを刻一刻と迎えていく。
クリフ最高!これはタランティーノ流キャラクター映画だ!と言い放ちたいほどに魅力的な主人公二人のおかげで現実社会との境界線も観客に意識させない。一方は現状に悲観的で神経質怒りっぽく声荒げやすい、もう一方のんびり自分らしく飄々としながらも自分の意見は決して曲げない。例えばリック・ダルトンなら予告にも使われていたメリル・ストリープ級にプロ意識高い女の子に褒められて涙するシーンは本作きってのメルトダウンな名シーン(にしても2日目長い力の入れよう)。むしろ(致し方ないのだが)実際にいた人物ほどキャラクターが見えてこず平べったい部分はある。が、そこすら大した問題でないような祝祭感とカタルシス、そしてオタク魂に火を点ける。ただ、向こうで問題になっているブルース・リーの扱いについては難しい所。それもタランティーノは『キル・ビル』で、ブラピは『ファイト・クラブ』で引用しているからより一層。確かにあそこでのクリフのキャラがあるから、それ以降のクリフの言動も納得行くのだけど、ブルース・リーにタランティーノ節な台詞まくし立てを言わせるのは確かに少々キツい部分があるし、あのシーンの長回しはスゴかったけど、やっぱり多少なりとも僕たちのヒーローを汚された気になったのも事実だから。それ以外、予告などで名前が挙げられていた面子以外にもキャストが豪華すぎる。まさしくオールスターキャストで隅々まで抜かりなくて驚かされる。タランティーノ常連のメンツもいれば(デスプルーフコンビ?カートラッセル、マドセン、ティムロス etc.)、エミール・ハーシュ、ダミアン・ルイス(マックイーン!)、ダコタ・ファニング、ティモシー・オリファント等など枚挙に暇がないほど。とにかくやっぱり最高なクリフ役ブラピと相棒。『セブン』『ファイトクラブ』など男に愛される男、野郎を夢中にさせる。
紛れもない至極の時間、祝祭ご褒美タイム。そして一見なんてことのない全部乗せ。相変わらず小技が効きまくりで作中でも名前を挙げられ意外な所で活躍する(?)マカロニウェスタンの名匠セルジオ・コルブッチ作品『豹/ジャガー』のポスター等を見つけたり、タランティーノのオタクな思い入れ偏愛炸裂しまくりな当時っぽいオリジナル劇中劇(もはや『BOUNTY LAW 賞金稼ぎの掟』本当に作ってほしい!)が作中結構頻繁に相当数出てきたりする度に、映画館で自分(シャロン・テート本人)の姿と観客の反応を見て楽しむシャロン・テートのようにニヤリとしてしまう。だからこそ最終日、運命の日を迎えてからの怒涛の時短ナレーション祭は個人的に少し残念ではあったし(意図的だろうけど)浮いている気もした。そこからの問答無用のお祭り騒ぎはネタバレ厳禁、ただマンソン・ファミリーについて知らないなら下手に調べたりしない方が終盤は純粋に楽しめるかも(?)。だけどラストのラストは上手く言えないけど何故だか胸締め付けられるような、ほんのりノスタルジックな気分になった。友情って素晴らしいご近所付き合い。皆が皆、イーストウッドみたいにTVスターから映画スターに華麗に転身できていったわけじゃない(=テクノロジー面などで時代に【意識的に→フィルム撮影、VFX好きじゃない?】取り残されていくタランティーノ自身をリックに重ねて)から...そんな少しだけ優しい作り手=神様の眼差しと奇跡。ここには何よりタランティーノ自身の《イノセント》な理想・願いが詰まっている。僕はそんな後味も込みでこの作品を偏愛したい。

『イングロリアス・バスターズ』以降、一環して歴史の敗者を勝者にしてきたタランティーノに期待する終わり方ではあったけど、今までで最も私的で感傷的だった。

ポスターほしすぎて久っ々に前売買った甲斐あった!今年の一大大イベント終わってしまった...喪失感たるや。
『チャーリー・セズ』筆頭にマンソン関連ビジネス熱い?もう分かったよ〜知ってるから!
『マネーボール』の頃には50歳で役者やめて製作業に専念するとか言っていたけど今年『アド・アストラ』もあるしブラピまだ第一線退くには早い?まだまだまだまだ見たいよ〜頼みます!
今作ではどうやら時代に取り残されていくリック・ダルトンに自身を重ねていたらしいタランティーノだけどまだまだこんなにも面白いもの作れるんだから10本と言わずまだまだ作ってほしい気もする〜頼みます!!けどこれだけ私的思い入れありそうなの作っちゃったら...という気も。。

(あくまで今日の)個人的タラちゃん作品好きランキング
1.パルプ・フィクション
2.レザボア・ドッグス
3.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
4.ジャッキー・ブラウン
5.イングロリアス・バスターズ
6.キル・ビル
7.ジャンゴ繋がれざる者
8.デス・プルーフ
9.キル・ビル2
10.ヘイトフル・エイト

TOMATOMETER85% AUDIENCE70
Thrillingly unrestrained yet solidly crafted, Once Upon a Time in Hollywood tempers Tarantino's provocative impulses with the clarity of a mature filmmaker's vision.
Richard Roeper 4/4
In certain elements of tone and structure, "Once Upon a Time In Hollywood" has echoes of "Pulp Fiction" and "Jackie Brown," but it is alive and electric with a beat all its own.
Rolling Stone 4.5/5
Tarantino's all-star fantasia links Hollywood and Manson-era violence into the best and most explosive cinema we've seen all year. You can feel Tarantino's mad love for movies in all their disreputable dazzle and subversive art in every shot.
Wall Street Journal
As one might expect from Mr. Tarantino's previous films, his new one is violent as well as tender, plus terrifically funny. Yet this virtuoso piece of storytelling also offers intricate instruction on the pervasiveness of violence in popular culture.
RogerEbert.com 4/4
EMPIRE 4/5
James Berardinelli ReelViews 3.5/4
Chock-full of brilliant moments, great performances, and a sense of '60s Hollywood infused with a mix of fairy tale nostalgia and clear-eyed realism.
Matthew Lickona San Diego Reader 3/5
Meandering but deliberate, gorgeous and garrulous, it is very much the writer-director doing what he does so well, but in very familiar fashion. Which brings up the possibility that in making a movie about movie making, his real subject here is himself.
Mick LaSalle San Francisco Chronicle 4/4
Four good films in a row. Three masterpieces out of four. Forget the public - Tarantino owes it to himself to see how far he can keep this string going

とぽとぽ